2012年03月の読書メーター [a day in the life]
読んだ本の数:16冊
読んだページ数:4912ページ
ナイス数:0ナイス
仕事するのにオフィスはいらない (光文社新書)
読了日:03月16日 著者:佐々木 俊尚
巡礼 (新潮文庫)
読了日:03月15日 著者:橋本 治
暴力団 (新潮新書)
読了日:03月12日 著者:溝口敦
さむけ (ハヤカワ・ミステリ文庫 8-4)
読了日:03月11日 著者:ロス・マクドナルド
イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」
読了日:03月10日 著者:安宅和人
機龍警察(ハヤカワ文庫JA)
読了日:03月08日 著者:月村 了衛
ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足
読了日:03月07日 著者:深田 浩嗣
とせい (中公文庫)
読了日:03月05日 著者:今野 敏
現代人の祈り―呪いと祝い
読了日:03月04日 著者:釈 徹宗,内田 樹,名越 康文
アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子 (幻冬舎文庫)
読了日:03月04日 著者:深町 秋生
バイバイ、ブラックバード
読了日:03月04日 著者:伊坂 幸太郎
七つの海を照らす星
読了日:03月03日 著者:七河 迦南
武器としての決断思考 (星海社新書)
読了日:03月02日 著者:瀧本 哲史
システム障害はなぜ二度起きたか――みずほ、12年の教訓
読了日:03月02日 著者:
うほほいシネクラブ (文春新書)
読了日:03月02日 著者:内田 樹
噂 (新潮文庫)
読了日:03月01日 著者:荻原 浩
2012年3月の読書メーターまとめ詳細
読書メーター
神奈川近代文学館と第51回 ACC CMフェスティバル入賞作品上映会に行ってきた [a day in the life]
神奈川近代文学館に行ったのは、大学二年生のとき以来だ。あのときはたしか「夏目漱石展」だった。今回は、毎年恒例のACC CMフェスティバル上映会に行くついでに寄ってみようと思ったのだった。特設展は冒頭の写真にある中園英助展だ。おそらくご存知のない方が多いと思うので下記に丸投げしておこう。
◇中薗英助
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E8%96%97%E8%8B%B1%E5%8A%A9
当方の認識はスパイ小説を書く作家というものだったが、後期には純文学系統の作品も書かれていたようだ。実は一冊も読んだことがないので、いずれ古本屋さんで見つけて読んでみることにしよう。
観終わった後、観光スポット周遊バスあかいくつに乗車して会場に赴く。100円で観光スポットに案内してくれる便利なバスだ。これはお薦めしておきたい。
さて、今回の上映会の案内役は㈱タンバリンの横澤宏一郎氏。主な作品は、トヨタ「カローラ2にのって」、リクルート「SUUMO」、サントリー「ペプシネックス」、コナミ「ウイニングイレブン」など、とのこと。
では、下記に当方の好きなゴールド受賞作品やグランプリ作品など貼っておこう。
●お母さんの愛情っていいですよね。泣けます。
●不思議な感じ。設営には手間がかかったでしょう。
●文句なしの傑作! グランプリ受賞作品です。
ロス・マクドナルド:『さむけ』(早川書房) [book]
驚いたことに、いや、呆れたことにロス・マクドナルドの小説を初めて読んだ。もちろん名前なら30年以上前から見聞きしていたのに、どうしてこの年齢にいたるまで読まなかったのか。一言で言ってしまえば辛気臭そうだったからだ。
その印象自体は間違っていなかった。たとえば中高生の時分に本書を読んでいたとしても、読了する意欲が沸かなかったのでは、という気がする。一定程度の年齢にならなければわからない小説というものはあるのだ。
新婚旅行の第一日目に新妻のドリーは失踪した。夫に同情し彼女の行方を探すこととなったアーチャーは、失踪の背後に彼女の過去の影が尾を引いているとにらんだ。数日後、彼は手掛りをつかめぬまま夫の家を訪れた。と、そこには血にまみれ、狂乱するドリーの姿が……! 新境地をひらく巨匠畢生の大作。
のっけから余談だが、上記の梗概は出版社のサイトから引っ張ってきたものだが、実は正確ではない。「数日後」とあるが、当方が読んだ限りではリュウ・アーチャーが依頼人の青年と会った当日の夜のこと。そして、「夫の家」とあるが、これも正確ではない。この梗概はおそらく30年来変わっていない。もう訂正しようがないのだろうか。それとも誰も気づいていないのだろうか。
閑話休題。ロス・マクの小説は、濃密な文体で細部描写がこれでもか、と続くようなイメージを持っていたのだが、さにあらず。基本的にはアーチャーが関係者に徹底して質問をしそれを聞くという、会話が主体の小説だということ。だから、存外に読み進めるスピードが速かったのは意外だった。
プロットは、ハードボイルドの王道である失踪人探し。乱暴に言ってしまうと、〔失踪人探しの依頼を受ける→関係者をあたりヒアリングする→失踪人の肖像が浮かび上がる→併せて、関係者相互と失踪人の関連が浮かび上がる〕という図式。その時代・社会の暗部を描き出すために便利な様式なのだろう。
本書が本国で発表されたのは1963年。当方は生まれていなかったのでどんな年だったのかを確認したら、あのダラスでのケネディ暗殺事件が起こった年だ。その前の年はキューバ危機があったり、と、ある意味ではいま以上に不安な社会情勢だったのかもしれない。
そんな時代背景は、やはり本書に深く影を落としている。終始、不協和音が流れているかのように、読書は不安感を感じさせられる。唯一、安定しているのが主人公のアーチャーのみ。彼を道案内に、われわれ読者はロス・マクの描く架空の街"パシフィックポイント"の霧の中をさまようことになるのだ。
読了して感じたのは、もちろん正統派ハードボイルドという括りではあるのだが、極端に言ってしまうとホラー小説としても読めてしまったということ。こんなこというと怒られるかもしれないが。それほど、不安感というか不安定感のある小説だったのだ。
文庫版は1976年の初版から30年23刷という驚異のロングセラー。売れ続けるのにはわけがある。そのわけを知りたかったら読んでみるにしくはない。ただし、タイトルが指し示すように、読み終わってからカタルシスが得られる小説ではないので、そのあたりは覚悟しておこう。
月村了衛:『機龍警察』(早川書房) [book]
内容(「BOOK」データベースより)
大量破壊兵器の衰退に伴い台頭した近接戦闘兵器体系・機甲兵装。『龍機兵』と呼ばれる新型機を導入した警視庁特捜部は、その搭乗要員として姿俊之ら3人の傭兵と契約した。閉鎖的な警察組織内に大きな軋轢をもたらした彼らは、密造機甲兵装による立て篭もり事件の現場で、SATと激しく対立する。だが、事件の背後には想像を絶する巨大な闇が広がっていた…“至近未来”警察小説を描く実力派脚本家の小説デビュー作。
ありがちなライトノベルのような印象があったので敬遠していたが、ここにきて良い評判を聞くようになり読んでみたところ、これが大当たり。娯楽作品として巻措くあたわぬおもしろさだ。
枠組みは実は警察小説そのもので、組織と個人の相克・刑事による地道な捜査・警察組織内部の対立構造まど、このあたりは読みなれたものには違いない。
そこに「機甲兵装」という兵器の存在が外挿されると、その世界が見慣れぬ風景に遷移するところがすばらしい。本書のレビューでよく言われる「攻殻機動隊」や「パトレイバー」を当方は未見なのでよくわからないが、機甲兵装自体はボトムズシリーズにおけるATのイメージを持った。
そして、本書の最大の特徴は強烈な個性を持つ登場人物たちだろう。最新型機甲兵装に乗り組む三人の傭兵、外務省から出向してきている警視庁"特捜部"部長、メカニック責任者の女性警部補など、いずれもがいわゆるキャラ立ちしている。
著者はもともとアニメーションの脚本家で、当方も見知ったタイトルがあったりするが、小説は本書が処女作。しかしながら、キャラクタ造形・ストーリー展開ともに新人らしからぬ腕前であり見事だ。周知のとおり、本書もまたシリーズもので、すだに続刊が発売されている。
どこかで読んだり観たりしているような題材でありながら、世界観の巧みな組み合わせとストーリテリングで一気に読める娯楽小説になっている。ミステリ好きにもSF好きにも愉しめる一冊だろう。
◎第二巻目です
深田浩嗣:『ソーシャルゲームはなぜハマるのか』(ソフトバンククリエイティブ) [book]
ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足
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現在、大手の二社によるソーシャルゲームにはまったく興味がない。むしろ嫌いかもしれない。あまり大きな声では言えないが、ある種の危うさを感じるからだ。もちろんそれは当方の勝手な言掛かりだ。二社が爆発的な売上の伸長をみせているのは、当然のことながら、ユーザの支持を得ているからにはちがいない。
ただね、たまに見るTVのCMの多くが同二社のものだったりするわけで、それはちょっと前に消費者金融やパチンコのCMが大量に放送されていた状況と似ている。この二業態が共通するのは"クセ"になるということだと思う。当方も一時期パチンコにはまった時期があった。あれはちょっと時間があるとやりたくなってしまうんだよね。
二社が展開するソーシャルゲームという事業も、「クセになる」という人間の習性をうまく利用しているのだろう。このエントリを書きながら決算短信をみてみたら、両社とも営業利益率が40%台後半、というかほとんど50%だ。驚いたね、ものすごく儲かっているんだ。クセになるという人間の習性がこれほどの利益率をもたらすんだね。
いや、やっかみ・妬みはあるよ、当方も会社員だから。でもさ、それ以上に当方が感じるのは「心配」だ。それだけの高利益率を持つ商売は気まずくないのかという心配と、提供されるサービスを享受するユーザに対して、そんなことにお金使っていいのかいという心配。大きなお世話なのはわかっているんだけどね。当方だって酒飲みでタバコ飲みだし。
そんなことを思いながらも、周りの人間がしょっちゅうケータイでピコピコしているのをみていると、おもしろいのには理由があるのだと思う。そんな興味があり本書を手にしたのだった。
内容紹介
なぜ仮想アイテムが売れるのか?
いかにユーザを熱中させるか。いかに「楽しい!」を引き出すか。
人気ゲーム「釣り★スタ」と「怪盗ロワイヤル」を題材に、人を夢中にして離さないしかけを徹底分析。
顧客ロイヤリティを向上させる仕組み「ゲーミフィケーション」の理論と実践を詳細解説!
結論から申し述べると、冒頭で述懐したような興味を満足させられる内容ではなかったです。中盤ではゲームの内容について分析するパートがあるが、ルールブックや解説書を読んでもスポーツのおもしろさはわからないのと一緒、ということにあいなった。
本書を乱暴に要約すると、あれだけの高利益率を誇るソーシャルゲームベンダーの提供するサービスの構造を読み解いて、他のビジネスに応用できないか、というもの。そのあたりのまとめ方は手堅いものがあるのだが、うーん、新しい発見とか驚きは少ない。
ソーシャルゲームがユニークなのは、その熱中する要因が個人の趣味趣向だけではなく、他者との関わりによるものだということなんだろう。その構造を単純に、たとえばネット通販なんかに応用できるのか、といえばちょっと違うようにも思える。モノを買うときの高揚感とゲームをプレイしているときのそれって違うからね。
うーん、あいかわらずまとまりがないな。強引にまとめると、ゲーミフィケーションという構造のとっかかりを学ぶためには、わかりやすくまとまっていて良いが、その向こうにあるものがなかなか見えにくかった、ということになるか。
◎関連書
深町秋生:『アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子』(幻冬舎) [book]
内容(「BOOK」データベースより)
暴力を躊躇わず、金で同僚を飼い、悪党と手を結ぶ。上野署組織犯罪対策課の八神瑛子は誰もが認める美貌を持つが、容姿から想像できない苛烈な捜査で数々の犯人を挙げてきた。そんな瑛子が世間を震撼させる女子大生刺殺事件を調べ始める…。真相究明のためなら手段を選ばない、危険な女刑事が躍動する、ジェットコースター警察小説シリーズ誕生。
期待通りの愉しさを与えてくれるという意味で手堅くまとめた作品といえる。なかでも当方が興味深く思えたのが主人公の女性刑事の性格付け。いや、正確に言うと性格付けを読み取らせない人物造形だ。まるでサイボーグのように淡々と職務と悪さをこなしていく。終盤では満身創痍となるのだが、それでも追跡を止めない姿など、まるでターミネーターのようだ。
逆に、その他の登場人物たちの個性が際立つという不思議。キャリア組の署長や中国マフィアの女ボス、そして主人公に雇われた女子プロレスラー崩れなど、周囲のキャラクターのほうが印象的なくらいだ。
描かれる連続殺人の様相は割りと複雑ながら、主人公はわりとあっさり真相を見抜く。このあたりは物足りないといえばそうなんだが、本書全体が壮大な物語のプロローグ的な位置付けということもあるのだろう。
全体に卒なくこなされた印象の作品。これからさらに化ける可能性もあるので続刊を鶴首して待つことにしよう。
七河迦南:『七つの海を照らす星』(東京創元社) [book]
かつて読みたい本を選ぶ際の情報は雑誌や新聞の書評欄で、もちろん今も参考にしているのだが、ここにきて役立っているのは、やはりAmazonのカスタマーズレビューやブログの記事だ。おもしろそうに紹介されている本は、読んでみなくては、という気にさせられる。本書もまた、同じSo-netブログ長屋の"milk pan,milk crown "で紹介されていたもの。
出版社 / 著者からの内容紹介
【第18回鮎川哲也賞受賞作】
様々な事情から、家庭では暮らせない子どもたちが生活する児童養護施設「七海学園」。ここでは「学園七不思議」と称される怪異が生徒たちの間で言い伝えられ、今でも学園で起きる新たな事件に不可思議な謎を投げかけていた。
孤独な少女の心を支える"死から蘇った先輩"。非常階段の行き止まりから、夏の幻のように消えた新入生。女の子が六人揃うと、いるはずのない"七人目"が囁く暗闇のトンネル……七人の少女をめぐるそれぞれの謎は、"真実"の糸によってつながり、美しい円環を描いて、希望の物語となる。
繊細な技巧が紡ぐ短編群が「大きな物語」を創り上げる、第18回鮎川哲也賞受賞作。
いわゆる「日常の謎」系統で連作短編集だから、東京創元社らしい内容といえるだろう。結論から申し述べると、そのミステリとしての結構については、当方に関して言えば、あまり驚愕するようなものではなかった。もちろん、これは個人差だ。
それよりも驚くべきは、その小説のうまさ。まず文章がいい。独特のリズム感があり、ときにリリカル、ときにシリアス・ユーモラスに語られる文章は読んでいて心地よい。
そして活き活きとした登場人物たちの描写。主人公の北沢春菜のキャラクタの清新さ、探偵役をつとめる海王さんが具体的な描写がされないにもかかわらず不思議な個性が浮き上がってくることなど、これまた巧い。
舞台が児童養護施設ということもあり、内容についてはやはり児童虐待の問題など重い題材だ。それに目をそむけさせない小説の力が相俟って、タイトルや表紙画から想像されるほのぼの系ではない力強い小説となっている。刊行が2008年で、当時は評判になっていたに違いないだろう。そんな小説を読み逃してしまうのは当方もヤキが回ったということか。
ところで、著者は筆名や主人公からすると女性なのかな? いや、そのへんの情報がwebにはなかったもので。
日経コンピュータ:『システム障害はなぜ二度起きたか』(日経BP社) [book]
実家も配偶者もともに、みずほ銀行がメインバンクだで、当方のみが三菱東京UFJ。特に理由はないのだが、思い返せば卒業後の入社直前に「給与振込用の預金通帳をつくっておいてください」というお達しを忘れていて、気づいたときにたまたま新宿にいたので、当時の三菱銀行で無理やり間に合わせたのだった。
結果的に、現状の同行のサービス(本支店間の振込手数料無料とか)には満足しているので良い選択だった。そういえば、いまではふらっと入った銀行で預金通帳をつくることなんてできなくなってしまった。なんだかんだいって、20年前くらいは牧歌的だったんだな。
内容(「BOOK」データベースより)
このシステム障害は、経営の失敗そのものだ。みずほはまだ、真因に気付いていない。このままでは、三度目が起こる。
2002年の経営統合時のシステム障害からもう10年経ったのか。そして震災後のトラブルからも1年、月日の経つのはまことに以て速いものだ。
さて、本書は震災後のシステム障害について、その原因や経過を取材したもの。当時の報道で「義捐金の受付口座振込集中」が原因とされていて、「そんなことくらいでダウンするのか」と思っていたところ、本書を読むと本当にそうだったので驚いてしまった。
乱暴にまとめると、振込数の上限を超える振込が発生→それを処理するに当たってエラーが発生→処理しきれずに翌日の店舗開店時の処理漏れが発生→だめぽ、というところ。じゃあ、上限を超える振込には対応できなかったのかというと、その上限の設定をミスっていたということらしい。
振込上限のパラメータ設定は、たぶん個人のほんのちょっとしたミスだったんだろう。にもかかわらず、連鎖的にシステムがダウンし結果として同行は大きな被害を蒙ったわけだ。いやはや、おそろしいおそろしい。
それらを本書の著者である日経コンピュータは丹念に追っていくのだが、これまた非常に感情的な筆致に驚いてしまう。これでもか、という叩きぶりだ。もちろん、当時の経営陣の初動の遅さと情報技術に関するスタンスには正直なところ呆れるところはあるが、それにしてもね。
当方のような素人からすると、本書のような銀行の勘定関連システムのみならず、交通や公共の仕組み、下手したら軍事なども増築に増築を重ねてわけのわからなくなった温泉旅館のようになっているんじゃないかと心配になってしまう。
本書で著者の言うことは正論なのではあるが、いま動いているシステムを止めて刷新するのは技術的にも費用的にも無理があるのではないか。じゃあ、動いているシステムを動かしながら改善していくというのも、結局は後々になってわけがわからなくなってしまう。そのあたりのデッドエンドに関する具体的な打開策が記されていなかったのが惜しいところだ。
荻原浩:『噂』(新潮社) [book]
内容(「BOOK」データベースより)
「レインマンが出没して、女のコの足首を切っちゃうんだ。でもね、ミリエルをつけてると狙われないんだって」。香水の新ブランドを売り出すため、渋谷でモニターの女子高生がスカウトされた。口コミを利用し、噂を広めるのが狙いだった。販売戦略どおり、噂は都市伝説化し、香水は大ヒットするが、やがて噂は現実となり、足首のない少女の遺体が発見された。衝撃の結末を迎えるサイコ・サスペンス。
どこかのブログで絶賛されていたのと、Amazonのカスタマーレビューでも評判がいいので購入。ライトなエンタテインメントという期待に違わず、お昼から読み始めて夜中に読了してしまった。都市伝説と連続殺人という組み合わせはそれほど斬新な設定とは言いがたいが、そこにリアルな警察小説の枠組みを組み合わせたことが新鮮だ。
主人公の小暮は、妻に先立たれ一人娘と暮らす所轄の刑事。激務であった警視庁捜査一課から、娘のために所轄に転属を申し入れて数年。年齢は43歳だから、当方と同い年だ。しばらくのあいだ殺しのなかった所轄で発生した連続殺人のために娘と会えない日々が続く主人公の姿がリアル。仕事に対するスタンスや組織へのある種の嫌悪感など、このぐらいの世代の男の考えることっていっしょなんだな。
そして、彼とコンビを組む本庁の女性警部補の名島の人物造形が出色。そのほかの登場人物も含め、陰惨な連続殺人でダークな雰囲気になりそうな物語にコミカルな味わいを付加している。いくらでもおどろおどろしくできる題材を良い意味でライトに読ませる手腕は見事だ。
さて、梗概にある「衝撃の結末」については賛否があるのだが、当方は否かな。作品全体にあるコミカルな雰囲気が反転するようなあqwせdrftgyふじこlp
著者の作品は初読だが、ここまでのストーリーテラーとは思わなかったというのが正直なところ。これを期に他の作品を呼んでみよう、そんな気にさせる一冊。