日経コンピュータ:『システム障害はなぜ二度起きたか』(日経BP社) [book]
実家も配偶者もともに、みずほ銀行がメインバンクだで、当方のみが三菱東京UFJ。特に理由はないのだが、思い返せば卒業後の入社直前に「給与振込用の預金通帳をつくっておいてください」というお達しを忘れていて、気づいたときにたまたま新宿にいたので、当時の三菱銀行で無理やり間に合わせたのだった。
結果的に、現状の同行のサービス(本支店間の振込手数料無料とか)には満足しているので良い選択だった。そういえば、いまではふらっと入った銀行で預金通帳をつくることなんてできなくなってしまった。なんだかんだいって、20年前くらいは牧歌的だったんだな。
内容(「BOOK」データベースより)
このシステム障害は、経営の失敗そのものだ。みずほはまだ、真因に気付いていない。このままでは、三度目が起こる。
2002年の経営統合時のシステム障害からもう10年経ったのか。そして震災後のトラブルからも1年、月日の経つのはまことに以て速いものだ。
さて、本書は震災後のシステム障害について、その原因や経過を取材したもの。当時の報道で「義捐金の受付口座振込集中」が原因とされていて、「そんなことくらいでダウンするのか」と思っていたところ、本書を読むと本当にそうだったので驚いてしまった。
乱暴にまとめると、振込数の上限を超える振込が発生→それを処理するに当たってエラーが発生→処理しきれずに翌日の店舗開店時の処理漏れが発生→だめぽ、というところ。じゃあ、上限を超える振込には対応できなかったのかというと、その上限の設定をミスっていたということらしい。
振込上限のパラメータ設定は、たぶん個人のほんのちょっとしたミスだったんだろう。にもかかわらず、連鎖的にシステムがダウンし結果として同行は大きな被害を蒙ったわけだ。いやはや、おそろしいおそろしい。
それらを本書の著者である日経コンピュータは丹念に追っていくのだが、これまた非常に感情的な筆致に驚いてしまう。これでもか、という叩きぶりだ。もちろん、当時の経営陣の初動の遅さと情報技術に関するスタンスには正直なところ呆れるところはあるが、それにしてもね。
当方のような素人からすると、本書のような銀行の勘定関連システムのみならず、交通や公共の仕組み、下手したら軍事なども増築に増築を重ねてわけのわからなくなった温泉旅館のようになっているんじゃないかと心配になってしまう。
本書で著者の言うことは正論なのではあるが、いま動いているシステムを止めて刷新するのは技術的にも費用的にも無理があるのではないか。じゃあ、動いているシステムを動かしながら改善していくというのも、結局は後々になってわけがわからなくなってしまう。そのあたりのデッドエンドに関する具体的な打開策が記されていなかったのが惜しいところだ。
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