荻原浩:『噂』(新潮社) [book]
内容(「BOOK」データベースより)
「レインマンが出没して、女のコの足首を切っちゃうんだ。でもね、ミリエルをつけてると狙われないんだって」。香水の新ブランドを売り出すため、渋谷でモニターの女子高生がスカウトされた。口コミを利用し、噂を広めるのが狙いだった。販売戦略どおり、噂は都市伝説化し、香水は大ヒットするが、やがて噂は現実となり、足首のない少女の遺体が発見された。衝撃の結末を迎えるサイコ・サスペンス。
どこかのブログで絶賛されていたのと、Amazonのカスタマーレビューでも評判がいいので購入。ライトなエンタテインメントという期待に違わず、お昼から読み始めて夜中に読了してしまった。都市伝説と連続殺人という組み合わせはそれほど斬新な設定とは言いがたいが、そこにリアルな警察小説の枠組みを組み合わせたことが新鮮だ。
主人公の小暮は、妻に先立たれ一人娘と暮らす所轄の刑事。激務であった警視庁捜査一課から、娘のために所轄に転属を申し入れて数年。年齢は43歳だから、当方と同い年だ。しばらくのあいだ殺しのなかった所轄で発生した連続殺人のために娘と会えない日々が続く主人公の姿がリアル。仕事に対するスタンスや組織へのある種の嫌悪感など、このぐらいの世代の男の考えることっていっしょなんだな。
そして、彼とコンビを組む本庁の女性警部補の名島の人物造形が出色。そのほかの登場人物も含め、陰惨な連続殺人でダークな雰囲気になりそうな物語にコミカルな味わいを付加している。いくらでもおどろおどろしくできる題材を良い意味でライトに読ませる手腕は見事だ。
さて、梗概にある「衝撃の結末」については賛否があるのだが、当方は否かな。作品全体にあるコミカルな雰囲気が反転するようなあqwせdrftgyふじこlp
著者の作品は初読だが、ここまでのストーリーテラーとは思わなかったというのが正直なところ。これを期に他の作品を呼んでみよう、そんな気にさせる一冊。
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