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A・E・ヴァン・ヴォークト:『非Aの世界』(東京創元社) [book]


非Aの世界【新版】 (創元SF文庫)

非Aの世界【新版】 (創元SF文庫)

  • 作者: A・E・ヴァン・ヴォークト
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/02/27
  • メディア: 文庫

内容(「BOOK」データベースより)
いままさに“機械”によるゲームが始まろうとしていた。成績優秀者には政府の要職が、優勝者には金星行きの資格があたえられる。ギルバート・ゴッセンもこれに参加するべく“機械”市へやってきたが、奇妙な事実が判明する。彼はまちがった記憶を植えつけられていたのだ。自分はいったい何者なのか。ゴッセンの探索が始まるが、背後では銀河系規模の陰謀が進行していた。歴史的傑作。
ははは。わかんないや。自分の記憶とは異なる世界に放り出された男という発端も今となってはありふれたもので新鮮味はない。主人公のギルバート・ゴッセンは、行き当たりばったりに行動するばかり。「一般意味論」という学説(?)がどういうものなのかもわからないので、本書をどのように読み解いていいのかわからない。

と、文句ばかりだが、このとっちらかり感というかおもちゃ箱をひっくり返したようなめちゃくちゃさは特筆していいと思う。金星のテラフォーミングの乱暴さとか、唐突に登場する銀河連盟みたいな(いい意味での)バカさ加減は愉しめた。

今となっては古いと言わざるを得ない物語なので、読むとしたらSFのオールドファンで読み逃していた人限定か。



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『マネー・ショート』 [movie]

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原題:The Big Short
監督:アダム・マッケイ
原作:マイケル・ルイス
出演:クリスチャン・ベール、スティーブ・カレル、ライアン・ゴズリング、ブラッド・ピット
製作年: 2015年
製作国:アメリカ
配給:東和ピクチャーズ
上映時間:118分

当方は株式や債券等の投資の類は一切やっていない。ああいったものは素人が手を出してはいけないものだと思っている。だから直接的には株価の上下に一喜一憂しない平和な生活を送れている。簡単に儲けることなんてできないのだから。
解説
05年、ニューヨーク。金融トレーダーのマイケルは、住宅ローンを含む金融商品が債務不履行に陥る危険性を銀行家や政府に訴えるが、全く相手にされない。そこで「クレジット・デフォルト・スワップ」という金融取引でウォール街を出し抜く計画を立てる。そして08年、住宅ローンの破綻に端を発する市場崩壊の兆候が表れる。
本書の原作である『世紀の空売り』は当方が読んでもおもしろい金融系ノンフィクションだった。だから相応に期待をして鑑賞したのだが、そこは裏切られなかったといっておこう。ただし、逆に原作を読んでいたからわかる、ということは多い。そもそものサブプライムローンから、それを債権化するとはどういうことなのかなど、一定の知識が必要である。

あと、ライアン・ゴズリング演じるドイツ銀行の行員が一種の語り部役のメタ構造を持っているのだが、それがどれほどの効果があるかは疑問。観客を戸惑わせるものになってはいまいか。

米国経済(ひいては世界経済の)の破綻に逆張りを仕掛けるということに対しての罪悪感や、ファンド・マネージャの兄に関するサイドストーリーなど、なんとなく余計かな、という気はする。また、基本的には空売りを仕掛けて2年間は待つというストーリーなのでテンポは少しかったるい。

という感じの細かい文句はあるのだけれど、クライマックスの一つであるラスベガスのエピソードに見られる金融業界や政府に対する不信感を包み隠さず訴えてくるところなど、やはり骨太である。余談だが、ラスベガスにおける食事のシーンで徳永英明の『最後の言い訳』がBGMに使われているのは示唆的だ。

単純なエンタテインメントを期待すると物足りないが、社会派ドキュメンタリー映画などがお好きな人にはおすすめである。


◎原作も良書です。

世紀の空売り―世界経済の破綻に賭けた男たち (文春文庫)

世紀の空売り―世界経済の破綻に賭けた男たち (文春文庫)

  • 作者: マイケル・ルイス
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2013/03/08
  • メディア: 文庫


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『ロブスター』 [movie]

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原題:The Lobster
監督:ヨルゴス・ランティモス
出演:コリン・ファレル、レイチェル・ワイズ、レア・セドゥ、ベン・ウィショー
製作年: 2015年
製作国: アイルランド・イギリス・ギリシャ・フランス・オランダ・アメリカ合作
配給:ファインフィルムズ
上映時間:118分

二週連続でヒューマントラストシネマ渋谷に行くことになった。先週観た際に本作が予告編にありこれはおもしろそうだと目星をつけたのである。2月いっぱいはメンバーズカードに登録すると招待券がもらえることがわかっていたので入会し、本作に備えたのであった
解説
独身者は身柄を確保されてホテルに送り込まれ、そこで45日以内にパートナーを見つけなければ、動物に変えられて森に放たれるという近未来。独り身のデビッドもホテルへと送られるが、そこで狂気の日常を目の当たりにし、ほどなくして独り者たちが隠れ住む森へと逃げ出す。デビッドはそこで恋に落ちるが、それは独り者たちのルールに違反する行為だった。
本作については、当方の勘が的中した。当方好みの不条理感あふれた佳作である。ちなみにタイトルは、どんな動物に変えられたいかと訊かれて主人公が答えたもの。

いわゆるディストピアものなのだが、そもそも45日間ルールとは何なのか、動物に変えられるとはいったいどういうことなのか、それらに関する説明が一切なく、最後まで語られることもない。鑑賞者はのっけから宙ぶらりんになる。

主人公役を演じるコリン・ファレルは、逆肉体改造をしたのかおなかの出た冴えない中年男性役を抑えた演技で好演。これまでのアクションものとはまったく異なる雰囲気だ。

意図的に撮られているのだろうが、影の薄い男性陣に比べて個性的な女性が目白押しの映画ではある。作中でホテルに軟禁状態にある独身者は、森の独身者を一人狩るごとに動物化への猶予が一日増える。特に優秀なのがサイコパスじみた女性だったりする。また、レア・セドゥ演じる森の独身者たちのリーダーもまた、冷酷な女性だ。

それらの対比や映画の語りに騙りがあることなど鑑賞者に読み解くことを強いる映画である一方で、ブラックな笑いを愉しめるある種のコメディ映画でもある。舞台となるホテルや自然の風景の美しさも愉しめる。ほとんどがアイルランドで撮られたもののようだ。

それにしても、冒頭のシークエンスは最後まで観終わってもよくわからない。どういう意味だったんだろうか。



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フランク・ハーバート:『デューン 砂の惑星〔新訳版〕 下』(早川書房) [book]


デューン 砂の惑星〔新訳版〕 (下) (ハヤカワ文庫SF)

デューン 砂の惑星〔新訳版〕 (下) (ハヤカワ文庫SF)

  • 作者: フランク ハーバート
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/01/22
  • メディア: 文庫


内容(「BOOK」データベースより)
そして遂に復讐の時がきた。フレメンの一員と認められたポールは、その超常能力から、預言者ムアッディブとしてフレメンの全軍勢を統率する立場になっていた。ハルコンネン家の圧政とポール指揮下のフレメンの反撃に、惑星アラキスは揺れる。状況を危惧した皇帝とハルコンネン男爵は、軍団を引き連れ、再び惑星へと降り立つが…。映画化・ドラマ化され、生態学SFの先駆けとしても知られる伝説的傑作。
ということで通読が完了。率直な感想として、本来はもっと語られるべき何かがあったのに、尺の問題でちょん切られた部分があるのでは、というものだった。つまり、本書にあたる章はだいぶダイジェストされているのではないかということ。まったくの憶測ですが。

物語の終幕も、明らかにto be continued といった体で、もちろんご存じのとおりこの後もシリーズは続いてくのだが。巻を追うに従い難解かつ複雑になっていく物語だったと記憶している。

典型的な物語の王道を装っている本書は、実は相当にグロテスクな世界観を持っている。この下巻でそれは特に際立っているように思う。願わくはハーバート自身の手になる最終巻まで新訳版を出版してほしいものだ。



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大野左紀子:『あなたたちはあちら、わたしはこちら』(大洋図書) [book]


あなたたちはあちら、わたしはこちら

あなたたちはあちら、わたしはこちら

  • 作者: 大野 左紀子
  • 出版社/メーカー: 大洋図書
  • 発売日: 2015/12/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
どういった経緯でか失念したが、著者のblogであるOhnoblog 2がRSSリーダに登録されている。本書の基になったweb連載はそのblogの案内で知っていたが、積極的に読むことはなかった。

今回、一冊に纏まったことを知り図書館に収蔵されないか待っていたのだが、登録されず。結局購入することにした。出版社がアダルト系だからだろう。連載も18禁サイトだったし。

出版社からのコメント
映画女優たちが扮する様々な姿から、複雑な女性の人生を読み解いて、日々を前向きに生きるヒントを得る。
読んで驚いたのが、とてもよくできた映画評論になっていること。よい書評や映画評は、あらすじをうまく紹介して、その本や映画を読みたくさせること、と何かで読んだことがあるのだが、まさにその感じである。

ちなみに当方が鑑賞したくなった作品は『ルイーサ』、『女はみんな生きている』、『浮き雲』の3本。いずれも興味を掻き立てられる紹介になっている。また、もともとが美術家である著者ならではのファッションやインテリア、そして女性に対する審美眼も切れ味するどいものだ。

これだけの良書が、出版社のブランドで判断されて収蔵されないのは、図書館における選書の限界を感じさせる。機械的にやらないと現在のあふれかえらんばかりの出版物に対応しきれないことはわかっているが、何とももったいない。そんなことを感じさせた一冊。



ルイーサ [DVD]

ルイーサ [DVD]

  • 出版社/メーカー: TOブックス
  • メディア: DVD

女はみんな生きている [DVD]

女はみんな生きている [DVD]

  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • メディア: DVD



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