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小野不由美:『残穢』(新潮社) [book]


残穢 (新潮文庫)

残穢 (新潮文庫)

  • 作者: 小野 不由美
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/07/29
  • メディア: 文庫


内容(「BOOK」データベースより)
この家は、どこか可怪しい。転居したばかりの部屋で、何かが畳を擦る音が聞こえ、背後には気配が…。だから、人が居着かないのか。何の変哲もないマンションで起きる怪異現象を調べるうち、ある因縁が浮かび上がる。かつて、ここでむかえた最期とは。怨みを伴う死は「穢れ」となり、感染は拡大するというのだが―山本周五郎賞受賞、戦慄の傑作ドキュメンタリー・ホラー長編!
基本的には「読んでから観る」派なのだが、本作は映画鑑賞後の読了ということになる。映画版は雰囲気も含めてかなり原作に忠実なものだった、というのが感想。いや、久保さんは30代の編集兼ライターという設定ではあるのだが。

ドキュメンタリタッチの手法は、ホラー小説では今まであったようでいてないもので、そこに新しさはある。切れかかった糸を丹念にたどり紐解くという主人公たちの行動にスリルがあるのだ。なので、ホラー小説かといわれるとそれほど怖くはない。

おそらくは著者の実生活や実在の作家たちが登場する場面など、虚実ないまぜでリアリティを追及するところは映画版より優れていると感じた。だから「読んでから観る」ほうが愉しめるし、そうなると映画版は少し物足りなくなるかも。

◎関連記事
『残穢』
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月村了衛:『ガンルージュ』(文藝春秋) [book]


ガンルージュ

ガンルージュ

  • 作者: 月村 了衛
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/02/19
  • メディア: 単行本


「あたしたち、最強の相棒。」

韓国最凶の特殊部隊が日本に潜入。
迎え撃つは、元公安のシングルマザー&女性体育教師!?
読むマンガである。だから、「機龍警察」シリーズを期待する人には不満があるかもしれないが、当方は愉しめた。元公安の主婦とロックミュージシャンあがりの中学の女性体育教師のバディもの。この設定からしてリアリティを期待してはいけないのだ。

だいたいが、〇〇〇〇〇の〇を〇〇〇で〇〇〇すなんてありえないから大笑いしてしまう(ネタバレにつき伏字対応)。この著者にこういったコメディ成分があるとは意外な驚きである。重苦しい小説だけでは胃もたれしてしまう。3時間程度で読める上に愉しませてくれる作品だ。

◎関連エントリ
月村了衛:『機龍警察』(早川書房)
月村了衛:『機龍警察 自爆条項』(早川書房)


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『マジカルガール』 [movie]

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原題:Magical Girl
監督:カルロス・ベルムト
出演:バルバラ・レニー、ルシア・ポシャン、ホセ・サクリスタン、ルイス・ベルメホ
製作年: 2014年
製作国:スペイン
配給:ビターズ・エンド
上映時間:127分

いまテアトルシネマが熱い。三週続けてのヒューマントラストシネマである。今日は有楽町だが。予告編を見る限りではこれからも期待できる作品が続きそうである。
解説
白血病で余命わずかな少女アリシアは、日本のアニメ「魔法少女ユキコ」の大ファン。ユキコのコスチュームを着て踊りたいというアリシアの夢をかなえるため、失業中の父ルイスは高額なコスチュームを手に入れようと決意する。しかし、そんなルイスの行動が、心に闇を抱えた女性バルバラやワケありな元教師ダミアンらを巻き込み、事態は思わぬ方向へと転じていく。
これはまた、鑑賞後にいやな気分になる映画だ。なんとも救いがない。ハリウッドはもちろん、日本でもこのようなストーリーの映画は作られないに違いない。当方はミヒャエル・ハネケの作品を想起した。

当方が興味深く感じたのは、多くを語られない細部。バルバラの仕事とは、あるいはダミアンはなぜ刑務所に入っていたのか。そういったことは観客には全く説明されない。もちろん、それが効果を上げているのだが。観て損する映画ではないが、なかなか評するに難い。精神的に参ってるときには避けたほうがいいかも。



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「ライティング基礎講座」に行ってきた [a day in the life]

正式な講座名は「もう文章を書くのがイヤだなんて言わせない!たった20分でエッセイが書けるライティング基礎講座」だ。文章を書くのはあまり得意ではないので、こういった講座で学ぶことも必要と思い立ったのだった。

Peatixというチケット販売サイト(?)に登録しているのだが、そこから「あなたにおすすめ」とサジェッションされたのがきっかけ。3,000円ならためしに行くのも悪くはない、と。

結論から申し上げると、参加して良かったというところ。当方が学んだのは、まずは書かなきゃはじまらないということ。講座名は「20分でエッセイが書ける」とあるが正確には教室で20分で書かされました(笑) 20分でも集中すれば何かしら書けるものだ。

あと、文章は短めがいいということ。当方もワンセンテンスが長くなりがちなので自戒したい。文章を読んでもらうことはサービスである、と先生はおっしゃっていた。なるほどである。

今回の講座の発展系が開催されるようであれば参加したい。



水野和夫:『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社) [book]


資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)

資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)

  • 作者: 水野 和夫
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2014/03/14
  • メディア: 新書


今週の10日に著者の講演会に行く予定。そのための予習として本書を手に取る。薄手の新書なのであっという間に読めてしまった。
内容(「BOOK」データベースより)
資本主義の最終局面にいち早く立つ日本。世界史上、極めて稀な長期にわたるゼロ金利が示すものは、資本を投資しても利潤の出ない資本主義の「死」だ。他の先進国でも日本化は進み、近代を支えてきた資本主義というシステムが音を立てて崩れようとしている。一六世紀以来、世界を規定してきた資本主義というシステムがついに終焉に向かい、混沌をきわめていく「歴史の危機」。世界経済だけでなく、国民国家をも解体させる大転換期に我々は立っている。五〇〇年ぶりのこの大転換期に日本がなすべきことは? 異常な利子率の低下という「負の条件」をプラスに転換し、新たなシステムを構築するための画期的な書!
本書を乱暴に要約してしまうと、資本主義社会における「成長」は地理的に拡大することで新しい供給元や需要先を見つけることで可能だった。しかし、グローバリゼーションが進み新たなフロンティアがなくなった今、「成長」は困難になっている。それを覚った米国は「成長」を金融市場に求め、一時はそれを謳歌するも、結果としてはリーマンショックを招来する羽目になった。

新たなフロンティアはなく、金融市場にもバブル崩壊というリスクがある以上、資本主義における「成長戦略」は無理筋である。資本主義に代わる新たな仕組みを考え出す局面にある。といったところか。

その論旨には当方も同意できる。先日観た『マネーショート』に印象的なシーンがあった。金融派生商品を説明するものだ。ブラックジャックで賭けている二人を見る人が、どちらが勝つかを賭ける。さらに、その賭けをしている人のどちらが勝つかを…。と、ちょっと理解が違うかもしれないけれど無限連鎖講みたいなもので、誰が最後にババを引くかということである。無限の成長には、無限のカモが必要、と乱暴に言ってしまおう。

平たく言うと、著者は新たな「周辺」がない現在、資本主義による「成長」は無限に続かない、ということを言っているのだ。ではどうしたらいいか。そのことについて、著者もまた明確な解答は持っていない。そりゃあ、何百年も続いているシステムの後釜を個人が想像/創造できるはずがない。

当方個人としては、少なくとも「成長」が不可能となった社会でどのようにサバイバルするか、少しづつ夢想していくしかない、と思っている。


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