平川克美:『小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ』(ミシマ社) [book]
内容(「BOOK」データベースより)
大震災、「移行期的混乱」以降の個人・社会のあり方とは?政治家も経済学者も口にしない、「国民経済」復興論。短期的ではなく長期的な視点での復興策を、血の通った言葉で書きつづった感動的な論考。
あいかわらずのおもしろさである。著者の作品としては比較的うすいし、文体もですます調であっという間に読み終わってしまうところが惜しいくらいだ。あっという間に読み終わってしまうのに、その全体像を語れといわれても容易にしえない老獪さもまたあいかわらずであり、いま、このように読後の感想を記していても、その内容をなんとも語りようがない。
いえるのは、冒頭に置いた梗概にある「論考」というよりは、著者自身が述べているようにエッセイに近いものであるということ。起業に関するビジネス書的なものではないことも、著者自身が述べている。そして正直なところ、全体としてのまとまりには欠けている。
でも、それがいい、ということもいえる。長めのアフォリズムが有機的に絡まりながら、全体としてはゆるやかな繋がりを持つという言い方か。そこかしこにある示唆的な言葉たちが、読むものの心の何かを起動させる作用がある。そこから、読者は興味や関心を広げればいい、と、そんなことを感じさせる一冊。