石持浅海:『見えない復讐』(角川書店) [book]
そもそも著者の作品を読み始めたのは偶然の産物で、職場の同期(♀)が『 賢者の贈り物 』を読んでいて、「ふーん」といった感じで当方も購入し読んでみたからだった。以来、近年ではもっとも好きな作家となったのだが、もっと驚いたのは配偶者が読んでいたこと。『 水の迷宮 』は配偶者から借りたものだ。
そんなわけで、著者の作品で未読のものは『 顔のない敵 』,『 人柱はミイラと出会う 』,『 リスの窒息 』の三冊となった。石持浅海成分が乏しくなったら読むことにしよう。
内容(「BOOK」データベースより)
エンジェル投資家・小池規彦の前に現れた大学院生・田島祐也。仲間と三人でベンチャー企業を起ち上げたばかりの田島は小池に出資を求めに来たのだ。やがて小池は田島の謎めいた行動から、彼が母校・東京産業大学に対しての復讐心を抱いていることを見抜く。実は小池も田島と同じく大学への恨みを抱えたまま生きていたのだ―。
さて、本書は『 攪乱者 』や『 この国。 』と同系統の、著者のダークゾーンを垣間見られる作品。もちろん、著者の作品は徹頭徹尾ダークゾーンにあるじゃないか、という突っ込みは聞かないふりをしておく。
そもそも法人に復讐を、だとか、その復讐のために企業を起業するなどというどこかねじくれた論理が一般的な読者には合わないと思う。一方で、著者の作品を好む人間は、その論理がおもしろいと思うのだからしょうがないのだ。
本書はまた、前述の二作と同様に連作短編集の結構をとっているが、おそらくは著者が構想していた結末とはずれた方向に結末が行ったものと感じられる。あくまで勘ではあるし根拠はないのだが。そこがまた不思議な魅力になっているのが特徴の作品である。