高田郁:『想い雲―みをつくし料理帖』(角川春樹事務所) [book]
内容(「BOOK」データベースより)
土用の入りが近づき、澪は暑気払いに出す料理の献立に頭を悩ませていた。そんなある日、戯作者・清右衛門が版元の坂村堂を連れ立って「つる家」を訪れる。澪の料理に感心した食道楽の坂村堂は、自らが雇い入れている上方料理人に是非この味を覚えさせたいと請う。翌日、さっそく現れた坂村堂の料理人はなんと、行方知れずとなっている、天満一兆庵の若旦那・佐兵衛と共に働いていた富三だったのだ。澪と芳は佐兵衛の行方を富三に聞くが、彼の口から語られたのは耳を疑うような話だった―。書き下ろしで贈る、大好評「みをつくし料理帖」シリーズ、待望の第三弾。
第三弾は、シリーズを通じての謎の一端が少しずつ解明されてくるという位置付けにある。そろそろ、物語が閉じ始めるのかな、という予感がする。それはそれでさびしいものだが、あまりにも長く続いていってしまうよりはいいのかも、と思う。
澪を取り巻く登場人物たちも相変わらずで、安心して読めるシリーズといえる。本書では、タイトルにもなっている「想い雲」がその幻想的な雰囲気が本シリーズでは異色ゆえに最も印象に残った。
この第三巻まで、どのエピソードも破綻のない安定した内容となっている。安心して物語を読み進められるということの凄みを感じるのだ。このあたりが無闇矢鱈に刺激的なある種の小説とはちがところ。まだ読んでいない人は、第一巻目からどうぞ。
◎関連エントリ
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