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今野敏:『曙光の街』(文藝春秋) [book]

曙光の街 (文春文庫)

曙光の街 (文春文庫)

  • 作者: 今野 敏
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2005/09/02
  • メディア: 文庫

著者の最近作である『 凍土の密約 』を購入したのはいいんだが、どうやらシリーズものとのことで、その第一作である本書を泡食って購入。読み始めたのであった。


内容(「BOOK」データベースより)
日本でKGBの諜報活動をしていたヴィクトルは、ソ連崩壊後に解雇され、失意のどん底にあった。そこへヤクザ組長を殺す仕事が舞い込んだ。再び日本に潜入した彼を待ち受けていたものは―。警視庁外事課とヤクザを相手にスリリングな戦いを展開するうちに、やがて明らかになる日ソ時代の驚くべき秘密。


梗概だけを読めば、KGBの諜報員の物語のように思えるが、中心となる人物は彼を含めて三人。ヴィクトルはKGBの特殊部隊に所属していたが、解雇後は傭兵商売で食いつないでいる。

ヤクザの兵藤はプロ野球選手だったが傷害事件で球界を追われ、拾ってくれた親分の下で古いタイプの極道として半ば放棄した人生を生きている。そして、警視庁公安部外事一課の倉島は、ノンキャリアの出世頭ながら書類仕事に明け暮れる日々を倦んでいた。

そんな3人が出会うきっかけになった事件を本書では描いている。正直なところ、ストーリーやプロットはB級映画のそれといわれれば肯けてしまうもので、新しさとかはほとんどないと言っていいだろう。たとえば、冷徹なプロフェッショナルであろうKGBの諜報員が、意外に情に流されてしまうところなども、エスピオナージュとしては瑕疵といえると思う。

それでも愉しめてしまったのは、疎外感を感じ鬱屈している男たちがそれぞれの居場所を見つけに行こうとする探求の物語で、古くはあるが確固とした形式だからにちがいない。

もちろん、そんなに深く考えずに単なる娯楽小説として読むにも、著者ならではのリーダビリティの高さもあってさくさく読める。そんな観点からすれば、いっときの暇つぶしではありながらも、そこはかとない充実感を感じさせるの一冊といえるだろう。


◎関連エントリ
 ・今野敏:『疑心―隠蔽捜査〈3〉』(新潮社)
 ・今野敏:『同期』(講談社)


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