内田樹:『邪悪なものの鎮め方』(バジリコ) [book]
内容(「BOOK」データベースより)
「邪悪なもの」と遭遇したとき、人間はどうふるまうべきか?「どうしていいかわからないけれど、何かしないとたいへんなことになる」極限的な状況で、適切に対処できる知見とはどのようなものか?この喫緊の課題に、ウチダ先生がきっぱりお答えいたします。村上春樹『1Q84』の物語構造、コピーキャット型犯罪が内包する恐るべき罠、ミラーニューロンと幽体離脱、被害者の呪いがもたらす災厄、霊的体験とのつきあい方から、草食系男子の問題にいたるまで、「本当ですか!?」と叫びたくなる驚愕の読書体験の連続。不透明な時代を生き延びるための「裏テキスト」。
訳あって『 日本辺境論 』はまだ購入していない。なぜか本書のほうが先に手に入ったので読み進めることにした。例によって著者のブログからのコンピレーション本だ。だから、内容については著者のブログから本書の編集テーマである「呪い」という言葉で検索をかけていただければ当該の文章を読める。
我ながらおもしろい行動だと思うのは、上記のようにほとんど同じ内容をタダで読めるのに、このように一冊に纏まった書籍として1,680円をかけて購入し、さらに読了してしまったことだ。たぶん、多くの読者が同じ行動をしているに違いない。
なぜ、人はそんな行動をするのだろう。 タダで、しかもすでに読んでいる文章を、書籍として有料で購入するという行為はどう考えたっておかしいと思う。それでも購入してしまうのは、やはり統一したテーマで、そのテーマの流れを俯瞰できるからだと思う。
将来にわたって、紙に活字という「書籍」というメディアが生き延びられるかどうかはわからない。しかし、ここにそのヒントが隠されているのでは、と感じる。よく言われる「一覧性の高さ」というやつだ。検索性については、一長一短ではあるが、書籍としてまとまったモノになっていると検索範囲が狭まるということはあるだろう。
電子書籍はこれからより台頭していくものと思われるが、起動してから読み始めるまでの時間やバッテリの保ち時間・可搬性や耐衝撃性を考慮すると、紙のメディアのほうが未だにアドヴァンテージがある。でも、そのあたりのハードウェア的な問題は今後どんどん改善されていき、いつか本という存在はなくなってしまうかもしれない。
本に埋もれた生活をしている当方としては、その日が早く来るのを待ち望んでいる一方で、無味乾燥な電子書籍なんてつまらないなあ、という二律背反の感情を抱いているのである。
あ、本書ですか。おもしろいです、まちがいなく。夕方に読み始めて夜中には読みおわっちまうくらいですから。
◎関連エントリ
・橋本治,内田樹:『橋本治と内田樹』(筑摩書房)
・内田樹:『昭和のエートス』(バジリコ
・鷲田清一,内田樹:『大人のいない国』(プレジデント社)