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本多孝好:『WILL』(集英社) [book]

WILL

WILL

  • 作者: 本多 孝好
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2009/10/05
  • メディア: 単行本

内容(「BOOK」データベースより)
言えたはずの言葉が胸の中に積もっている。聞けたはずの言葉をいつも虚空に探している。30万人の心に沁みた『MOMENT』から7年。ほんとうに大切なものは、いつも側にあると気づいた。待望の書き下ろし小説。


同じ著者の『 MOMENT 』の登場人物の一人だった女性である森野が本書では主人公となる。18歳のときに両親を事故で亡くし、家業の葬儀屋を継いだのは前作でも語られていたが、前作から7年後の物語ということになる。だから続編には違いないので、『MOMENT』を読んでから、手に取るべき作品ということになる。

さて、本書は連作長編という体裁を取っており、プロローグとエピローグに挟まれた3編の短編から構成されている。とはいえ、作中では人物が重なって登場したりするのでこれまた順番通りに読み進めることが必要だ。

大きく括ればミステリという範疇に属する作品になるのだろうが、恋愛小説や家族小説とも読める内容となっている。テーマの中心になっているのは、主人公の職業柄かやはり「死」であり、このあたりは当方がこれまで読んできた著者の作品と同様のものだ。

当方が好きなエピソードは、2話目にあたる「爪痕」だ。以前に紹介した『 チェーン・ポイズン 』とも通底する内容・テーマであり、特にラストシーンは一人の人間の「再生」を予感させるものとなっているところがいい。また、3話目の「想い人」は著者の「陽」の部分が前面に押し出され、これまたある種の爽快感を感じさせる内容だ。

全編を読み終えると、またそこには著者らしい仕掛けなどもありミステリとしての側面も見逃せない。そしてラストでは、正直、泣けてしまったということを告白しておこう。『MOMENT』と併せてお奨めの一冊だ。


◎関連エントリ
 ・本多孝好:『MOMENT』(集英社)
 ・本多孝好:『チェーン・ポイズン』(講談社)


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