大山顕:『共食いキャラの本』(洋泉社) [book]
伊丹十三のエッセイ『 女たちよ! 』だったか『 再び女たちよ! 』だったかの文章で、トンカツ屋さんの看板にブタのイラストがあしらってあるのはどんな神経なんだろうと嘆息しているものがあった。まあ、たしかに冷静に考えれば趣味がいいものではない。
内容(「BOOK」データベースより)
とんかつ屋さんの看板でブタが笑って「おいしいよ」。おかしくも物悲しい「共食いキャラ」を大研究。日本ピクトさん学会会長(『ピクトさんの本』)との対談「ピクトさんVS共食いキャラ」も収録。
本書はそんな悪趣味な看板やサインを写真に納めコメントを振った、故・伊丹十三氏が読んだら卒倒しそうな内容だ。
内容については、読んでみてくださいとしか言いようがない。ブタさんやウシさん、そして鳥さん他のキャラクターたちのおかしくも哀切に満ちた運命に心が痛みつつも笑ってしまう。
本書を読んで思ったのは二点。webが日常の世界に入り込んできてから、特殊でマニアックと言われていた趣味趣向が身近になってきたことの効用だ。たとえば、本書にあるような看板は当然のことながら当方たちも日常的に目にしているが、それを冷静な目で異様なものとして視ることが一般的になってきたということだ。
うーん、言い方がわかりづらいな。平たく言えば、本当は普通じゃないのに普通と思われていることを"面白がる精神"が普及してきたということだ。ピクトさんとかもその良い例だと思う。
もう一つ、これは内容に関わっていることなんだけど、このような看板やサインは日本や韓国、そして米国ではわりと一般的らしいが、中国ではそうでもないらしいということ。これは少し不思議。足のあるものは椅子以外は食うというかの国のアイデンティティと関連があるのかもしれない。
日常のなかの異常を垣間見てみたい人向け。当方は冒頭の伊丹十三氏のエッセイを読んでいたのでいろいろな意味で面白く思えた。