森岡孝二:『貧困化するホワイトカラー』(筑摩書房) [book]
先日、NHKで放映された「プロフェッショナル 仕事の流儀」で弁護士の村田浩治氏が紹介されていた。同氏は主に労働問題を扱う弁護士として活躍されているようだ。なんで、そんなことを思い出したかというと、本書の後書きで同氏の名前が紹介されていたから。シンクロニシティってあるんだなあ。
内容(「BOOK」データベースより)
二〇〇八年から始まる恐慌のあおりを受けて、派遣社員の大量解雇など、雇用情勢は非常に悪化している。もはやホワイトカラーが勝ち組であるといった風潮は存在しない。非正規化、過重労働、成果主義といった圧力が重くのしかかり、ついには死に至ることもある。そのような日本のホワイトカラーの働き方・働かせ方に切り込み、その困難の背景と原因を探る。
本書は例によってタイトルのような内容を期待すると肩透しになる類の新書だ。てっきり、ホワイトカラーである正社員の雇用や処遇に変化が起こっているという内容だと思ったら、いや、もちろんそういう記述もあるのだが、どちらかというと労働問題そのものをテーマにしている書籍だ。
特に中盤以降は、過重労働による過労死・過労自殺問題や、男女の雇用不平等の問題などが多く語られ、もちろんそれはそれで知識を得るという面では有用なものとは思える。
しかしながら、それらの事例に対する具体的な対応策について著者の主張がみえにくいという印象を受ける。問題の受け皿やセーフティーネットが少ないという状況はあるにしても、だ。
現状を知る、という面では有益な書籍ではあるが、現状を打開するにはどうしたらいいのかという視点について何かしらを得ようという読書にはいまひとつか。労働問題の入門書向けかな。
現状社会の問題点を指摘する評論家や物書きは、わんさといる。
惜しむらくは、その人たちがだれ一人として、問題解決の具体的提案を行わない、行えないことである。
したがって評論家や物書きは、気楽な家業といえるかもしれない。
by 般若坊 (2009-10-22 20:24)