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神林長平:『アンブロークンアロー―戦闘妖精・雪風』(早川書房) [book]

アンブロークンアロー―戦闘妖精・雪風

アンブロークンアロー―戦闘妖精・雪風

  • 作者: 神林 長平
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2009/07
  • メディア: 単行本

中学生の頃から買っていた「SFマガジン」の購読を4月から中止した。実に四半世紀近くのあいだ継続していたのだが、今回の転勤と置き場所の問題を考えるとやむなし、という格好だ。

そもそも購読を始めたのは本シリーズの第一作である雪風シリーズが不定期連載されていたから。謎めいた展開やメカニズムの描写、そして乾いた文体など新しい本格SFの到来を確信したものだ。そして連載時の横山宏氏のイラストも作品の雰囲気に合い良かったと思う。

その後、一冊にまとまって文庫になったが、当方の生涯オールタイムベストを選ぶなら上位三作に入ってくる作品。なにしろ一冊目は何度も読み返してぼろぼろになり、二冊目まで購入してしまった。もちろん<改>も購入しているので、結果、都合三冊の『戦闘妖精・雪風』を持っていることになる。


内容(「BOOK」データベースより)
地球のジャーナリスト、リン・ジャクスンに届いた手紙は、ジャムと結託してFAFを支配したというロンバート大佐からの、人類に対する宣戦布告だった。ついに開始されたジャムの総攻撃のなかで、FAFと特殊戦、そして深井零と雪風を待ち受ける、思いもよらない苛酷な現実とは―。


と、まあ、そんな思い入れのあるシリーズではあるのだが、当方としては雪風の物語は第一作目で完結しているという解釈なので、『 グッドラック―戦闘妖精・雪風 』以降はいわば外伝として読んでいる。

そもそも著者の作品はデビュー以来から「現実とは何か」とか、「言語とは、そしてコミュニケーションとは何か」などの問いかけがあったが、近年の作品ではそれらのテーマ性ばかりが突出しているようで少しばかり置いてきぼり感があるからだ。

本作も例に漏れず、深井零をはじめとした登場人物たちが戦闘をそっちのけで議論を繰り返す思索的なSF作品として仕上がっている。だってそうだろう、コミュニケーションしがたい異星体とのコミュニケーションを描こうとしている作品なんだから。どうしたって思索的にならざるをえない。スタニスワフ・レムの惑星三部作なんてその良い例だ。

誤解しないでほしいのは、だからおもしろくない、ではなくて、だからおもしろい、ということ。さらに、ラストシーンの美しさ・感動も特筆すべきものだと思う。

とはいえ、雪風の第一作や『 今宵、銀河を杯にして 』、『 完璧な涙 』など初期の諸作品がギリギリのところでエンタテインメントになっていたころが懐かしい。まあ、リアルタイムに読んでいる中年男性の愚痴だけど。火星三部作も『 膚の下 』はかなり思索的になってるもんね。

著者のファンはとめられたって買っているだろう。だから、まだ著者の作品を読んだことのない人には初期作品から時系列で読み進めていってほしい。そして、一気読みしてそのおもしろさを味わってほしいのだ。何しろ、当方のような同時代の読者は、著者の作品は数年に一回しか読めなかったのだから。

さて、本書は著者のサイン本。別居人の勤め先の人にファンがいて、情報をキャッチ。サイン会場は当然のことながら東京だったが、別居人がもらいに行ってくれた。もちろんサイン本はうれしいが、ナマ神林長平に謁見できなかったことに悔いが残る2009年の夏でありました。

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