草上仁:『数学的帰納の殺人』(早川書房) [book]
驚いた。14時間も眠ってしまった。ほぼ起きずに。風邪が全快しかけていることや疲れていたこともあるんだろうけどこれほど眠ったのって久しぶりだ。そういえば、風邪は体が"休みなさい"と言っているサインだということをどこかで読んだことがある。そう考えれば、それほどおかしいことではないのかもしれない。
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内容(「BOOK」データベースより)
無人島に理想郷を築こうとした宗教組織が集団失踪した。そこで何が起こったのか?教団の足跡を取材中の女性フォト・ジャーナリストが発見した不可解な異物。そして彼女の周囲で起こり始める異変。数学者が、教団の教義から数学的に導き出した殺人連鎖とは何か?消滅したはずの教団は?カルト、廃墟、暗号、パラドックスなど、謎の迷宮の暗路に潜む真実を、数学論理が解き明かす、本格論理ミステリ。
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古参のSFファンなら、著者が短編SFの名手であることはご存知だと思う。当方もSFマガジン誌上で何回もみているのだが、実はその作品をまともに読むのは今回が初めて。しかも長編本格ミステリを読むことになるとは。
冒頭、1980年代と2008年を描き出す章が交互に提出されるのだが、これが当方としては苦手なパターン。なので途中で放り出しかとも思われたが、序盤が終わりかけてからストーリーがドライブし始める。
最初は女性カメラマンの巻き込まれ型サスペンス小説のような出だしだが、暗号めいた詩やら衒学的な数学者探偵の登場は本格ミステリの王道ともいえるもの。最近はこのようなパターンの小説を読んでいなかったのでかえって新鮮だ。
終盤に至っても緊張感は途切れることなく、伏線もきっちり回収されるミステリらしい出来に仕上がっている。だから、この途方もなくリアリティのない設定もある意味しょうがないな、と思わせる作品。
※※※以下ネタバレ白黒反転しています。
というか、このリアリティのなさがあの結末を意識したのだとしたら、これはホラー小説に近いものなのかもしれない。なんだか『リング』を思わせる結末でありました。
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