森達也:『きみが選んだ死刑のスイッチ』(理論社) [book]
テレビが嫌いな理由のひとつに、バラエティ番組で自局の番組や制作映画の宣伝をするタレントたちが多いこと。タレント個々人たちの都合と言うよりはむしろ当該のテレビ局の都合によるところが大きいと思う。そもそもテレビ局って許認可性だし公共性のあるものだ。そのテレビ局自体が自社制作の映画を番組内で露骨に宣伝するって言うのは、感覚的にはちょっとおかしいんじゃないか、と思う。
あと、ニュース番組がやたらとおどろおどろしくなっていること。これはNHKだって例外じゃない。とにかく出力を上げて視聴者に過大な入力を強いるという姿勢は当方は好まない。最近になって、テレビは貧者の娯楽という言い方をされているけれど、当方としても同意せざるをえないと思う。
内容(「BOOK」データベースより)
ホームルーム/裁判員制度/死刑―この3つに共通する、最大の注意点はなんでしょう?その答えは、この本のなかにあります。手遅れになる前に、ぜひいま、読んでおいてください。マンガ「小学生にもわからない裁判員制度のイロハ」入り。中学生以上。
著者の作品はこれまで何冊か読んできている。この"よりみちパン!セ"シリーズの『 いのちの食べかた 』も興味深く読んだ。一貫していえるのは、映像ドキュメンタリ作家としての著者の"メディア・リテラシー"の提言であると思う。
(前略)世界中の多くの国では、メディアにおける無罪推定原則は、かなり厳格に守られている。この国で育ったあなたはこれまで、逮捕された容疑者の顔や名前がテレビのニュースや新聞で当たり前のように報道されていることを、普通のこととして見たり読んだりしていたと思う。でも、それは世界の常識からすると、じつのところかなり普通ではないということを知ってほしい。近代司法における大事な原則に違反していることなのだということも覚えてほしい。※本文はルビ付き
そう、こんなところにも日本におけるメディアの歪みがあると思う。だから、著者の作品を読むと大切なのに意外に気づいていないことを分からせてくれる効用がある。
タイトルにある「死刑」についても、近著の『 死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う 』あたりからの著者のテーマのひとつで、当方の知らない現実を垣間見させてくれる。
著者のやってきたような仕事はいらぬ誤解を招くんだろうなあ。たいへんだと思う。でも、なかにはいくつかほんとうに大切なこともあるはずだ。当方が目を逸らしているものについて、知ることの大切さを教えてくれるという著者の仕事を、これからも応援していきたいと思う。
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