鈴木光司:『エッジ<上・下>』(角川グループパブリッシング) [book]
著者の『 リング 』は1995年の出版時に読んでおり、世の中にはこんなおもしろい小説があるんだと感心していた。リングというくらいだからボクシングの小説かと思っていたが、装丁画がビデオテープを描いたもので、いったいどんな話なんだろうと思った記憶がある。
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[ 内容 ]
冴子は、18年前に行方不明になった父への想いを抱えながら、全世界で相次ぐ失踪事件の謎を追う。この謎を解けば、父に会えるかもしれない。調べていくうちに、恐るべき事態が進行しつつあることに気づくが……
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さて本書は著者の最新作。ホラー系統の小説ではひさしぶりの作品だ。著者の小説の魅力はその筆力はもちろんだが、それ以上に魅力的な謎の提示とそれを論理的に解き明かそうという理性にあると思っている。本作も前半部分はそれが遺憾なく発揮されており一気に読了。
後半部分を読み始めると、もちろんそのストーリーテリングに一気読みなのだが、結末に近づけば近づくほど、ん、なんじゃこれ、といささか面食らうようなものになっていく。
当方は、この奇想天外な結末に否やはないのだが、一般的にはどうなんだろう。様々な宇宙論や物理学のから紡ぎ出されるアイデアは、SF小説を読み慣れたものからするといさかか陳腐な感は否めないし、なにより宇宙がどうなっちゃうんだろうというときにジャパニーズホラーしちゃうのもなんか違和感がなくもない(当方としてはおもしろいのだが)。
ごった煮感のある怪作といってしまえばそれまでなんだが、エンタテインメント性はものすごく高いし、『リング』のどきどき感をある程度は再体験できる作品。手放しでお奨めはできないが、少し変わったエンタテインメントを読んでみたい方は手にとってはいかがだろうか。
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