斎藤貴男:『強いられる死 自殺者三万人超の実相』(角川学芸出版) [book]
多くの方はすでにおわかりの通り、1995年から人口10万人当たりの都道府県別自殺率の最も高い県に転勤している。巷間では、きまじめな気質や低い日照率、経済的な問題など様々取り沙汰されている。本当のところはどうなのかよくはわからないが。
著者の作品は『 カルト資本主義 』や『 梶原一騎伝 夕やけを見ていた男 』などおもしろく読んだこともあり、前述の問題とも併せ読んでみることにした。
内容(「BOOK」データベースより)
10年間連続で年間3万人を超える自殺者を出す「自殺大国日本」。なぜ、これほどまでの自殺者を日本は出しているのか?自殺を「社会的に強いられる死」という視点から探り、日本の病巣に迫った渾身の話題作。
一般論ではあるが、自殺が増加したのは1998年のバブル経済の崩壊以降。以降、10年以上もの間、3万人の高止まりが継続している。社会・経済環境の変化と密接な関わりがあることは自明といえる。
この間における日本社会のあり方の変化は、今更ながら急激なものであったことや、それに対する国家,政治,組織としての法人,共同体の対応が後手に回っていると言わざるを得ない。
その当たりの事情について様々な側面から取材したルポルタージュだ。あとがきに記されているように「取材を引き受けたことをこれほど後悔」するほど重い題材といえる。
当方もこれまでの人生で、親しくはなかったものの知人とはいえる人間の二人が自殺している。当方のようなごく一般的な人間でさえ身近に自殺をされた方がいるのだ。
これは日本という国の喫緊の課題である思う。こうやっている今でさえ自殺をしようとしている人や自殺によって深く傷つく遺族の方がおられるかと思うと、どうしようもなく残念でならないと思う。
本書では、その具体的な取組みの萌芽もまた語られてはいるものの先行きは決して明るいだけのものではないと認識させられる。なんでこうなってしまったのか。個々人が考えることも必要だし、組織に属している人もまた、仕組みとしてどのような対応が可能であるか考える必要があると思わされる作品だ。
般若坊さんへ
nice!ありがとうございますー。
by 地蔵 (2009-05-13 22:48)