読売新聞政治部:『検証 国家戦略なき日本』(新潮社) [book]
テレビは大嫌いだと言っているが、NHK特集だけは積極的にみている。最近では「沸騰都市」シリーズをなんとはなしにみていたのだが、第7回目の「シンガポール」編は興味深かった。
細かい内容はここを見ていただくとして、本書でも同番組で取り上げられていた「バイオポリス」なる研究所群のことが触れられている。まことにタイムリーではある。
内容(「BOOK」データベースより)
この国の危機の本質は、その針路さえ決めずにいる戦略不在にある―。無資源国でありながら資源確保に遅れをとり、安全大国はもはや幻想となり、科学立国を標榜しながら政策はぐらつき、知財の基盤もゆらいで人材が流出して行く…。国家戦略という視点から、世界の中の日本を多面的に取材した驚愕のレポート。
本書では国家としての長期戦略のうち、現状の縦割り行政で省みられることが少なく、遅れをとった場合に一朝一夕では挽回しにくいものを取り上げている。科学技術,海洋戦略,エネルギー資源,安全保障,知財・知力、といったところ。
確かに、読むと「本当に大丈夫なの?」といった心配してしまう「長期戦略」の不在といえる。政治の問題なのか官僚の問題なのか、国民の意識の問題なのか判然としないところではある。
なぜ長期戦略が描けないのか。当方が感じたのは、やはり島国であるという特殊な地政学的位置付けと、内需だけでも食っていけてしまう市場規模にあるのではないか、と漠然とだけど思った。
当方は図らずもほぼ内需だけの産業に生息している会社員なので、ぬるま湯的島国的経済情勢をある意味で享受しており、たしかにそんな業界ではグローバルな長期戦略なんて描けないもんな。
そんなことを思いながら、丹念に取材された本書は問題意識を醸成するには好著と思えた。記者たちが社会部とかではなく政治部であるというのも、うん、確かに危機意識の現れであると思う。
惜しむらくは様々な情報が小さくまとまっていて全体像が描きにくいということ。そして打開の提言があまりみられなかったということか。それでも、この国の置かれている現状と課題を把握するためのとっかかりとしては良い本だと思う。文庫だし。
>xml_xslさん
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by 地蔵 (2009-02-28 06:11)