常岡浩介:『ロシア 語られない戦争 チェチェンゲリラ従軍記』(アスキー・メディアワークス) [book]
いつの時代のものでも良い。世界地図を広げたとき、そのどこにも戦争、紛争、対立の示されていない地図など例外中の例外である。
紛争地域を赤く塗るならば、現在の世界地図も、とび散った血のように赤く染まる。人間の歴史は戦いの記録でもある。人類は、人間同士、あるいは大自然を相手に闘ってきた。今も昔もそれは変わらない。
上記の文章は『 戦闘妖精・雪風 』の冒頭の文章。バリバリのSF小説ではあるのだけれど、戦争に関する本や映画を観るたびに思い出すのは上記の一文。「人間の歴史は戦いの記録」という認識は、悲しいけれど間違いないものだと思う。
内容(「BOOK」データベースより)
豊富な天然資源とプーチンという強力な指導者により未曾有の経済発展を遂げたロシア。だがその影で、けっして表に出ることのない「語られない戦争」が、いまでも行われている。紛争地帯の取材を続ける著者が、1年半ものあいだ行動を共にしたチェチェン独立派ゲリラ部隊での体験をもとに、ロシアの闇を暴く。
読み終わって思わず「惜しい!」と思った当方がいる。これはこれだけで終わらせるのではなく、もっと大部のノンフィクションとして上梓されるべきものだったのではないか。
圧巻はやはり第一章の、著者がチェチェン人とともに従軍した記録の章。これはすごい。著者は飢えで幻覚を見るくらいまで追いつめられるのだ。また、ともに従軍する人物たちも魅力的であり、もっと書き込んで欲しかったと思う。
第二章以降だって、著者は相当に危ない目には遭っているのだが、第一章の苛酷さに比べたら読んでいる方は気が楽だと思えるくらい。
こういった書物を読むと、やはり当方は何にも知らないということを認識させられる。本を読むということの効用のひとつは、知らない世界を知ることであって、そこから関心のある世界への扉が開けるということなんだろう。
なかなかヘヴィーな題材かつ背景を知らないとわかりにくいところはあるが、現在のロシアとその周辺諸国の様相を知るための入門書としてお奨めできると思う。
コメント 0