山田正紀:『神獣聖戦<上・下>』(徳間書店) [book]
今年はそれなりに読書をしてきたつもりだ。結局は年間で130冊程度。せいぜいが3日に1冊で、昔に比べたら遅くなったものだと思う。特に国内・海外問わず、骨太の作品は敬遠するようになってしまった。読書がお気楽な娯楽・教養になってしまったわけだ。数を稼げばいいってもんじゃないと、それは来年への反省材料としよう。
[日販MARCより]
<上> 鏡人=狂人、人類から派生したミュータントともいうべき存在。人類とその中間種である悪魔憑きとの時空を越えた戦いが始まる…。伝説の本格SF巨篇、遂に浮上。既存の中短篇の加筆修正&再編集に新作を加えた1冊。
<下> ここに人類の滅亡を告げる“舞踏会の夜”が始まった。人類は滅びる。そしてその滅亡には何の意味もない…。1983年の山田正紀と、“現在”の山田正紀。本書は、2人の天才作家の“合作”にして完全なる新作。
本書の、いわば底本に当たる「神獣聖戦1-3」と『魔術師の夜』を読んでいたのはたしかにほぼ四半世紀前のこと。いまさら、といってはなんだが、なぜ本書が上梓されたのかはよくわからない。とはいえ著者のファンを自認する当方としては当然のように購入する。
あはは。わかんないや。四半世紀前に出版された当初からそのイマジネーションに圧倒されていただけだったんだが、読み返してみてなおさらわからない。鏡人=狂人とは、悪魔憑きとは、背面航法とは...繰り出される異様な言葉や時代や空間を変え繰り返される物語群。そこには凡庸な本読みを寄せ付けない何かがある。
とはいえ、そこは天性の物語作家である著者のこと、結局は最後までおもしろく読まされる。振り返ってみると、このおもしろさって何だったんだろう、と呆然とすることになるのだが。
著者のファンはもちろんのこと、本格SFのファンはいうまでもなく手に取っているだろう。ただ、これからSFを読み始めようとする人は一通りのステップ、ようするに古典的な作品群を読んでからでないと置いてけぼりにされるのでお気を付けて。
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