福田和代:『TOKYO BLACKOUT』(東京創元社) [book]
本書でも言及されているが、「2006年8月14日の日本標準時午前7時38分頃に、旧江戸川を航行中のクレーン船がアームを架線に接触させ、これを切断。これにより東京23区東部と神奈川県横浜市、川崎市の一部、千葉県浦安市、市川市の一部を中心に、広い範囲で停電した」のを"首都圏大規模停電"と呼称するようだ。
当方はまさにこの時間に都営地下鉄の最寄の駅のホームに降り立ったっていた。一瞬、ホームが真っ暗になったので何事かと思ったのを覚えている。結局、地下鉄は運行せずいつ復旧するか不明だったのでバスでJR線の駅に移動し会社に向かったのだった。でも、電車っていうくらいで地下鉄さえ止まる停電時になぜJR東日本だけは走っていたんだろう、とふと思った。
これまた本書で言及があって、JR東日本は鉄道会社では唯一、大規模な自営の発電所をもち、全電力使用量の約6割、首都圏に限ってみれば約9割の電力を賄っているのだそうだ。
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[本の内容]
8月24日午後4時、東都電力熊谷支社の鉄塔保守要員一名殺害。午後7時、信濃幹線の鉄塔爆破。午後9時、東北連系線の鉄塔にヘリが衝突、倒壊。さらに鹿島火力発電所・新佐原間の鉄塔倒壊—しかしこれは、真夏の東京が遭遇した悪夢の、まだ序章に過ぎなかった。最後の希望が砕かれたとき、未曾有の大停電が首都を襲う!目的達成のため暗躍する犯人たち、そして深刻なトラブルに必死に立ち向かう市井の人々の姿を鮮やかに描破した渾身の雄編。
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東京創元社が特設ページをつくる気合いの入れように当然のごとく期待をしながら読み進める。結論から言うと、充分におもしろかったのだが物足りなさが残る小説だった。装幀の雰囲気から『 ダイ・ハード 』のような冒険小説を想像したがさにあらず。犯人グループと警察の戦いを描くというよりはむしろ、あらすじにあるような危機に直面した人々の群像劇を著者は志向していたものと思われる。
しかし、エピソードやキャラクター造型などにいまひとつ華がないというか、少しばかり盛り上がりに欠けるという印象だ。たとえば、停電だから電気釜でご飯が炊けないという嫁に、土鍋を使おうとする姑のエピソードなんてもっと書き込めばおもしろかったのに、と思う。この手の群像劇は良くも悪くも書き込むことが必要で、このボリュームでは物足りないと感じる。
犯人グループの個々の人間像もきちんと描けているとは思うのだけど、本当にこの動機でこれだけのオペレーションを遂行するのかどうかというリアリティについてはちょっと疑問だ。
なんて文句ばかりになってしまったが、 東京を大停電に至らしめるまでのディテールは圧倒的で綿密な取材には脱帽。二段組み300ページ弱は気楽に読めるというわけではないけど、1,600円(税抜)はそこそこ回収できる作品だと感じた。
色々災害を考えると恐いですね。どれだけのところが、自家発電?して対応できるようになっているのでしょうか。ライフラインとか・・。エレベーターの中にいたりしたらいやだなぁ。っていうレベルじゃないかな?
by duke (2008-11-09 01:32)
dukeさんへ
本書を読んだ限りでは、ライフラインを維持する施設や
病院、警察などは自家発電設備を持っているようです。
日本は地震大国ゆえ、備えは世界でも際立っているとのこと。
とはいえ何日間もの停電は想定していない模様。
確かに災害時のエレベータはこわいです。
閉じこめられたんじゃないけど、乗っているときに地震があり
ぐらんぐらん揺れて気分が悪くなったものです。
nice!&CMTありがとうございます!
by 地蔵 (2008-11-09 07:18)