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川端裕人:『ニコチアナ』(角川書店) [book]

ニコチアナ (角川文庫 か 42-2)

ニコチアナ (角川文庫 か 42-2)

  • 作者: 川端 裕人
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2008/08/25
  • メディア: 文庫

ええ、そうですとも。喫煙者ですとも。21世紀に入って最大の嫌われ者集団に属している一人ですよ。嫌われ者と自覚しているのに止めないのはやっぱりタバコが好きだからです。ほっと一息つくときやコーヒーを飲みながらの一服はやっぱりおいしい。そのくせ映画館で2時間半くらいの映画を観ても一向に禁断症状が出ないのはなぜだろう。うーむ、最終的には止めるほうが吉なんだろうなあ。


[BOOKデータベースより]
メイは、火を使わない無煙タバコ開発に情熱を注いできた。日本国内では発表の難しい事業。そこに食指を伸ばした米国アズテック社のCEO・デュークは、煙害のない新製品としてニューヨークで記者発表した。だが、会場でニコチンテロが発生。さらに、既に同様の特許を申請する人物の存在が疑われ出す。タバコ畑では葉に異状な斑が―。疫病を防ぎ特許を護るため、メイは秘蹟を描いた絵文書を探しに、大陸横断の旅に出る。


まず本作を読んでタバコの葉っぱがナス科に属しているということを初めて知った。しかもトマト、トウガラシ、ピーマンだけでなく、ジャガイモも属しているとのこと。いずれもコロンブスがアメリカを発見して持ち帰ったのが由来だそうで、トマトもピーマンもジャガイモも好きな当方がタバコを好きなのも納得できる話だ(そうなのか?)。

本作の重要なアイテムとなっている無煙タバコについて。喫煙者として最初に申し述べておきたいのが、煙の出ないタバコはまず買わないだろうなということ。暗闇で吸うタバコがおいしくとも何ともないのは煙が見えないからだと思う。喫煙者はニコチンのみに生くるにあらず、だ。

閑話休題。本作は喫煙派や嫌煙派の相克や社会問題を描くのが主眼ではなく、タバコを核にしてこの世界の認識の有りようを語った物語。世界認識とドラッグは切っても切れないようで、買ったのに未読でほったらかしのイアン・ワトスン:『 エンベディング 』も似たような舞台やテーマを扱っている。

したがってタバコを基軸にした企業小説やサスペンス小説というわけではなく文化人類学的な小説なので、決して親しみやすい小説ではないと思う。単行本の出版時にセールス面では芳しくなかったということは頷ける。小説の技法も近作の『 エピデミック 』のほうが高く、お奨めするには微妙な線の小説ではある。とはいえきちんと読み切ったのはリーダビリティが高かったから。興味のある方はどうぞ、と言っておこう。

おっと。そういえば本作の装幀イラストを担当されている影山徹氏のブログがso-net blogにありますね。『 パノラマ世界塔 』 というタイトル。他にも当方の読んだり所有していたりする書籍のイラストを担当されているようです。ここで敬意を表しフィーチャーしておこう。


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