関川夏夫:『家族の昭和』(新潮社) [book]
大雑把に言えば今年40歳になる人間は昭和と平成を半分ずっこ生きたことになる。千年期や元号で世代のタイプが明らかに変わるというような信仰は持ち合わせてはいないが、気づけば感慨深いものがある。20年前と言えばつい昨日のことのようだが、もうあの頃の髪の毛の量はないし豪快に飲み食いできるはずもない。寝てても朝は腰が痛くなって目が覚める体たらくだ。
それはさておき。当方はバブル経済でそれほどいい思いをした覚えはないと思っているが、周りに言わせると就職では楽をしたいちばん使えない世代とも言われて、使えないのはどの世代でも均等にいるじゃないかとは思うが分母が大きいからそう反駁はできない。当方の世代がこの時期ではいちばん中途半端なのかなとも思うが、それだって裏返しの優越感じゃないかと言われるとこれまたシュンとなってしまう。どの世代、どの性別でも生きづらいのが現代なのだと思う。
さて、著者の作品を読むのはこれまた初めて。エッセイストのような文芸評論家のようなよくわからない鵺のような位置付けの人だと思っていたが、いや、本作はなかなかの好著であると思った。
素晴らしいのは、この本がわかりやすい文芸評論であること。「本を読むことは自分を読むことに他ならない」と言ったのが誰だったか忘れてしまったけれど、向田邦子や幸田文、そして「金曜日の妻たちPart3」を語りながら、語っているのが自らの昭和観であり、それが自分を直接に語っていることでないという上品さが清々しい。当方と同世代の方にはお薦めの一冊であります。
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