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白土健・青井なつき:『なぜ,子どもたちは遊園地に行かなくなったのか?』(創成社) [book]

なぜ,子どもたちは遊園地に行かなくなったのか? (創成社新書 21) (創成社新書)

なぜ,子どもたちは遊園地に行かなくなったのか? (創成社新書 21) (創成社新書)

  • 作者: 白土 健
  • 出版社/メーカー: 創成社
  • 発売日: 2008/05/20
  • メディア: 単行本

別にこの程度で特定されるわけはないので言ってしまうが、当方は本書の第1部第1章で語られる横浜ドリームランドの傍らにあるドリームハイツの住人だった。引っ越してきたのが幼稚園にあがる前だから4歳ころか。以来ほぼ30年間を彼の地に住んだことになる。2002年に閉園になったときにはほとんど実家には寄りつかなくなっていたが、当時はなんだかもの悲しい思いがしたし、本書にある衛兵や潜水艦の写真を見ると、大げさではなく懐かしくて涙が出そうになった。以前、当方には故郷がないと書いたけどそんなことはなく、間違いなく彼の地が当方の故郷であると思った次第である。

とはいえ、同園の全盛時には道は混むし周りはやかましいしそれほどいいものとは思ってはいなかった。遊覧ヘリコプターまで発着してたんですよ、今となっては考えられない。今となっては、ということで言えば当方が卒園した幼稚園が閉園したと聞いた。居住者の高齢化・少子化も進んでいる。もしかしたら卒業した小・中学校もそう遠くない将来になくなってしまうのではないだろうか。全然関係ないが、そういえば彼の地に行くための公共の交通機関は神奈中バス(←ローカルネタ)しかないのだが、不思議なことに閉園してからもう5年以上経っているのにバス停の名前は「ドリームランド」のままだ。神奈中様、ぜひこの名称は残しておいてください。

というわけで個人的には大いにツボにはまったわけだが、そんな贔屓目を抜きにしても、本書は丁寧に取材・執筆されており、何より著者たちの遊園地に対する情熱に溢れた好著に仕上がっている。質・量ともに第1部の老舗遊園地の衰亡史の充実ぶりが素晴らしい。遊園地のみならず船橋ヘルスセンターや五島プラネタリウムなどへの言及があり、日本人のレジャー享受史とも読めるし関わってきた人間たちの群像劇とも読める。

タイトルにある『なぜ、子どもたちは~』という部分は第2部以降、分量にすれば5分の1程度となっている。ようするに「環境の変化」、「ニーズの多様化」や遊園地側の顧客満足度向上のための努力不足、というあたりが結論で、どこの業界も努力しなければ生き残れない、というのは当たり前のようだ。

著者たちには是非、第1部で描かれたなくなってしまった老舗遊園地の衰亡史について、対象を絞ったものを執筆してほしいものだ。できれば「横浜ドリームランド」について(←しつこい)。

地味な出版社だし、 近年の新書戦争で目立たなくなってしまうにはもったいない好著。文化史に興味のある方にお薦めするのはもちろん、それ以上に第1部で描かれる様々な遊園地や遊興施設の近隣に暮らしていた人たちにお薦めしたい。感慨もひとしおですよ。


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