ジェニファー アッカーマン:『かぜの科学』(早川書房) [book]
このまえの風邪っぴきは去年の六月頃だから、すでに一年以上は引いていないことになる。これは、当方のような病弱な人間には珍しいことだ。子どものころからしょっちゅう風邪ばかり引いていたし、30代半ばまでそんな状態だった。
ここ数年で風邪っぴきが減少してきたのは、早寝早起きしよく睡眠をとることを心がけてきたことがあるかもしれない。職場環境が変わり酒を呑む機会が減ったということも大きい。
それでもね、丸一年以上引いていないというのは、それはそれで何か悪いことが起こる前兆なのではないかと思えてしまう。会社を休んで、ふだんはない平日のTVを視るというのも何かしら非日常的でいいものだしね。
内容(「BOOK」データベースより)
病には数あれど、かぜほど厄介なものはない。これだけ長く研究されていながら、ワクチンひとつないなんて…練達のサイエンスライターが、かぜとは何なのか、かかったらどうしたらいいのか、多数の研究者に最新の知見を取材し、山とある俗信や市販薬の効果のほどを見定めつつ、自らの身を挺する罹患実験に参加までして、かぜを観察。あくまで科学の視点に立ちながら、読者の興味をそらさない絶妙の読みやすさをもって綴る、「かぜの生態学」。
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冒頭に申し述べたように、当方は風邪っぴきの権威なので、上記のほとんどの事柄が実際にはそうではないらしいことは知っていた。それでも、例えばビタミンCが風邪予防にあまり役立たないことなど、初耳のトリヴィアがあったりしたのだった。
そして、「ハゲと水虫と風邪の特効薬を開発したらノーベル賞もの」という台詞をどこかで読んだことがあったが、実は風邪の特効薬は真剣に開発されていない模様であることも、本書を読み初めて知った。
いわゆる風邪(普通感冒)は一週間程度で治癒するものであり、それを数日間前倒しでで治すための薬に意味があるか否か、ということで予算が下りないらしい。また、そもそも開発されたとしても高価になりそうで使う人がいない、というのが理由のようだ。
おっと、あまりネタばらししてこれから読まれる方の興味を削ぐのはまずいな。上記のような風邪に関する豆知識が書かれているとともに、「風邪の文化史」とでもいうような記述がそこかしこにあり愉しめる。海外の科学解説書とは思えない読みやすさが好もしい作品。翻訳がやや生硬なことが玉に瑕かな。
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