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佐々木俊尚:『2011年新聞・テレビ消滅』(文藝春秋) [book]

2011年新聞・テレビ消滅 (文春新書)

2011年新聞・テレビ消滅 (文春新書)

  • 作者: 佐々木 俊尚
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/07
  • メディア: 新書

取り立てて読書を疎かにしていたわけではない。ただ、HTC Legendがきてからというもの、昼休みが読書時間からRSSのチェック時間にかわってしまったということがある。Google先生の陰謀の一つだよな。でも、RSSリーダーで読むブログの内容が凡百の書籍よりおもしろい場合もある。これもまた時代だな。


内容(「BOOK」データベースより)
部数減と広告収入の激減が、新聞とテレビを襲う。ネット時代がもたらす構造的変化についていけないマスメディアの経営陣。加えて情報通信法施行と地デジ化がとどめを刺す。


実は同版元の『 グーグル秘録 』を読み進めているのだが、本書とまったく同じ主張なのには驚く以前に戦慄させられる。平たく言えば、おたおたしていると旧メディアはネット勢力に駆逐されちゃうよ、ということ。当方は、それほどドラスティックに変革が進むとは思っていないが、実はそっちのほうが怖いと思ったりもする。ようするに茹でガエルってやつ。知らないあいだにいつの間にか退路を断たれている、というような。

たとえば、いまさらあまり意識されていないかもしれないが、銀塩写真(フィルムカメラ)がここまでなくなっちまうとは10年前には誰が予測し得たろうか。かくいう当方は1998年くらいからデジタルカメラを使用していたが、カメラ好きの友人は「まだまだ銀塩でしょう」と言っていた。それが、カメラ映像機器工業会は「2008年4月に発表の2月分統計から、フィルムカメラの数値を空欄とした」。フィルムカメラの市場は、いつのまにかなくなっていたわけだ。これぞ茹でガエルと言わずしてなんと言おう。

とはいえ、細かいところは知らないけれど、カメラ業界には光学技術などが遺産としてあったから、旧来のカメラメーカーは多くが生き残ってきたのだろう。もちろん、コニカミノルタのように、自社の創業時の商材を諦めてまで新事業に舵を切り直した企業もあり、それはものすごい英断だと思う。そしてソニーやパナソニック、そしてカシオなどの家電・デジタルメーカーがデジタルカメラ市場に参入したという余波もある。

あれ、本書の内容とはまったく関係のない話になった。で、本書を読んで思ったのは、上記のように、テレビも新聞もいつのまにかなくなっているんじゃないか、ということ。いつのまにか誰からも必要とされず、なくなりはしないが、果てしなく規模が縮小していってしまう、そんな状態。

本書では繰り返しGoogleの及川卓也氏のいう「コンテンツ、コンテナ、コンベア」という三つのレイヤーがいかにシフトしていくかについて述べられている。新聞やテレビといったマスメディアの消滅は、そのレイヤーのシフトが原因であり、消費不況や少子化、あるいはコンテンツ自体の劣化が原因ではない、という主張は目新しい。

最終的に行き着くのは、メディアを取り扱う企業や業態の新陳代謝であり、それが資本主義や国家の活力を生み出していくという結論。もちろん肯ける部分は大きいのだが、いち生活者としては、失業者が溢れかえるような社会も困ってしまう。若い世代にはいいのかもしれないけど。そんな将来に暗澹とした思いを抱いてしまう中年世代も読んでいた方がいい一冊だと思う。


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