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梓崎優:『叫びと祈り』(東京創元社) [book]

叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)

叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)

  • 作者: 梓崎 優
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2010/02/24
  • メディア: 単行本

内容(「BOOK」データベースより)
砂漠を行くキャラバンを襲った連続殺人、スペインの風車の丘で繰り広げられる推理合戦、ロシアの修道院で勃発した列聖を巡る悲劇…ひとりの青年が世界各国で遭遇する、数々の異様な謎。選考委員を驚嘆させた第五回ミステリーズ!新人賞受賞作「砂漠を走る船の道」を巻頭に据え、美しいラストまで一瀉千里に突き進む驚異の連作推理誕生。大型新人の鮮烈なデビュー作。



読み進めて感じたのは、ミニシアターで鑑賞する映画のごとき味わいを持った作品だというもの。特にロシアを舞台にした「凍れるルーシー」は、なぜだか『 サクリファイス 』や『 こうのとり、たちずさんで 』を思い出させる。いや、まったく関連はないんだけど。ストーリーでぐいぐいと引っ張るわけではなく、雰囲気で酔わせるという、あの感覚だ。派手さもないし。

本書は連作短編集という構成。舞台は各話ごとにアフリカを思わせる砂漠やスペイン、ロシアや南米アマゾン川領域など。実際に著者が旅をしたり取材したのか、あるいはまったくの想像の産物なのかは判然としないが、それを斟酌することに意味はない。いずれも「ここではないどこか」という異界を象るために必要な舞台だったのだろう。それゆえか、当方にはミステリと言うよりも、幻想小説のように捉えられた。

とはいえ、ミステリ的な味付けも相応に濃い。文化人類学ミステリと言っていいかもしれない。当方は、各位が絶賛されている第一話の「砂漠を走る船の道」よりも、第四話の「叫び」が、終盤のネガとポジが反転するような驚きを得られ好もしく思った。ただ、感覚にも因るだろうが、最終話がとってつけたようなものになってしまっていると感じたのが惜しい。ケレン味はないが、じっくりと読める"小説"として、気になる向きにはお奨めしておこう。


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