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横石知二:『そうだ、葉っぱを売ろう! 』(ソフトバンククリエイティブ) [book]

そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生

そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生

  • 作者: 横石 知二
  • 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
  • 発売日: 2007/08/23
  • メディア: ハードカバー

最近読んだ『 犬の力 』のせいだろうか、本書のタイトルを見たとき「お、コカの葉でも売るのかい!」と勝手に思ってしまった。いや、まあ、それはともかく、この葉っぱビジネスについては、何かのテレビ番組で視た記憶があったので手に取ることにする。


内容(「BOOK」データベースより)
男は朝っぱらから大酒をあおり、女は陰で他人をそしり日々を過ごすどん底の田舎町。この町でよそ者扱いされた青年が、町民の大反発を買ったことから始まった感動の再生ストーリー。今では70代、80代のおばあちゃんたちが、売上高2億6000万円のビジネスを支え、人口の2倍もの視察者が訪れる注目の町に変貌した。著者が二十数年かけて成し遂げた命がけの蘇生術の全貌が明らかになる。


本書の舞台は徳島県勝浦郡上勝町。Googleマップで確認すると、相当に山奥のように見える。そんな山奥の小さな町で、年商260百万円のビジネスが成立したということが凄い。

そもそも、ミカンが主要な農作物であった同町だが、1981年に未曾有の寒害に見舞われた際、壊滅的な打撃を受ける。当時、農協に勤務していた著者は、その状況から挽回すべく農作物の大転換を実施するのだ。

驚くのはその当時の著者の奮闘振りである。365日休みなしで毎日12時間以上働いたというのだから。不良会社員の当方は爪の垢でもいただきたいくらいだ。いや、それは嘘、いらないけど。

閑話休題。その実績を以て農家からの信頼を集めた著者は、ある時に寿司屋で目にした光景をヒントに「つまもの」としての葉っぱを売るビジネスを思いつく。ようやく数人の支援者を得た後、 出荷したものの見込んでいた値が付かない。

なぜだろうと考えた著者は、実際にその葉っぱが使われているであろう料亭などに自腹で通い詰める。梗概には「命がけの蘇生術」とあるが、これ文字どおり命がけ。料亭での市場調査の結果で通風を煩ったり、その後の話ではあるが心筋梗塞になったりとまさに命がけだ。

なにが著者をこんなに動かしたのか。ありきたりにいってしまえば、著者の持っていたヴィジョンが突き動かしたんだろう。それは、閉塞した田舎町に働きがいや笑顔を取り戻したいという想いだ。女性やお年寄りでも手軽に扱える「葉っぱ」という商材を思いつき軌道に乗せたのも、そんなヴィジョンがぶれなかったからにちがいない。

著者を中心に上勝町はその歴史を大きく変えたわけだ。人の歴史は、やはり人が変えるものであって自然に変わるのではない。そんな単純なことを感じた一冊。大声でお奨めするつもりはないが、読んで損はないと思う。


◎本書の一言


出番と評価、人を元気にするには、このことが本当に大切だ。若者から高齢者まで、一人ひとり地域の中で自分の出番があり、働いて評価され、社会とつながっていると感じられれば、働くのはとても楽しいことになる。
(193ページ)
 

◎関連エントリ
 ・楡周平:『プラチナタウン』(祥伝社)
 ・清野由美:『セーラが町にやってきた』(プレジデント社)


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