滝田務雄:『田舎の刑事の闘病記』(東京創元社) [book]
内容(「BOOK」データベースより)
部下の白石の無能ぶりに卒倒し、病院に運ばれた黒川刑事。折しも入院病棟では、不審者が頻繁に病室に侵入しているらしい形跡が見られ…。表題作「田舎の刑事の闘病記」をはじめ六編を収録。田舎でだって難事件は起こる。鬼刑事黒川鈴木、今日も奮闘中。猿を追いかけ、蜂に追いかけられ、奥さんと台湾旅行に出かけて散々な目にあう黒川、今回は殺人事件にも遭遇します。お待たせしました、ミステリーズ!新人賞受賞作家による、待望の脱力系ミステリ・シリーズ第二弾。
シリーズ第一作の『 田舎の刑事の趣味とお仕事 』の出版が2007年8月だから2年少し待たされた。いまとなっては前作の内容はほとんど覚えていないのだが、主人公の黒川鈴木刑事の奥さんのキョーレツなキャラクタについては印象が強かった。
だから本作品集の第一話で久々の再会を果たせたのはうれしい。特に黒川刑事とのやり取りは絶品だ。なさそうでありそうなぎりぎりの線を突いたギャグだと思う。
と、単なるコメディ小説について語っているようだが、ミステリとしての骨格もしっかりしているのが良いところだ。特に「田舎の刑事の動物記」は瓢箪から駒的なプロットがほどよく練られている物語になっている。
当方の感覚ではキャラクタ作りやゆるいギャグ、そしてミステリの仕掛けについてなど、故・泡坂妻夫への志向があるように感じられる。根拠のない印象だが。来年には長編が二冊(うち一冊は本シリーズ)上梓されるとの予告が帯に記されている。今から楽しみだなあ、と思わせる一冊だ。
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