橋本治:『大不況には本を読む』(中央公論新社) [book]
昨日のエントリで新書にやや批判的に書いていたくせして、その舌の根も乾かぬうちに読んでしまった。実はあとで思いついたんだが、新書は入門書としての役割を担うことが多く、そこから読書の幅が広がっていくという意味でメリットがある、ということを言い漏らした。まあ、だからってあんなに出版されることは(以下略)。
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内容(「BOOK」データベースより)
もはや読書と出版の復権はありえないのか。「思想性ゼロの国」日本でいま起きている日本人の魂のドラマを描き、「本を読む」人間をここに取り戻すための方法を深く考察した、硬骨の力作。
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さて、年明けに『 橋本治と内田樹 』をエントリしたが、本書の著者ははじめて。苦手意識が先行していたのだが少し変わったタイトルにひかれて読み始める。
ところが、タイトルにあるような内容を期待すると拍子抜けになるのでご用心。本書の凡そ9割近くは経済に関する著者の私論となっている。なにしろ、第一章では世界的な金融危機を引き合いに出し概観したりしているのだから。
実はこのあたりは意外におもしろい。大くくりではあるが、そのメカニズムがわかりやすく説明されているからだ。このざっくり感は好もしいものに思えた。
全体を通じても、当方は著者と同じく、無限の経済成長などありえないと考えているくちだから共感できる部分は多い。個人的には人口減少社会に備えたダウンサイジングを考えていかないと、現在の経済システムは破壊的にクラッシュするのではないかと危ぶんでいるし。
本書では、経済を含めた近代日本社会がどん詰まりに来ていると認識したうえで、その打開策は著者自身もわからないといっている。ではどうすればいいか、について興味のある方は読んでもらって確認してほしい。ようするに本を読みなさい、と言うことではあるんだが、その結論に至るまでの道筋がおもしろい。
いわゆる学術的な論文調ではないし、読みたい人は読んでくださいという超然として突き放したところはあるんだが、どこかしら暖かみもあったりする不思議な文章だ。このあたりが、著者の作品が読み続けられる理由のひとつかもしれない。
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