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吉本佳生:『デリバティブ汚染――金融詐術の暴走』(講談社) [book]

デリバティブ汚染――金融詐術の暴走 (講談社BIZ)

デリバティブ汚染――金融詐術の暴走 (講談社BIZ)

  • 作者: 吉本 佳生
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/07/30
  • メディア: 単行本

なにを隠そう、趣味のひとつに貯金(預金)がある。近年はネット専業銀行の発達で自宅にいながら状態を把握できるのが素晴らしい。夜中にそれを見ながらニヤニヤしているのは相当に不気味な絵とは思うが。

なにより一般的な都市銀行より金利の有利な点がアドバンテージだ。一定金額以上の残高があれば振込み手数料が何回か只になる、なんて特典もある。

もちろん、普通預金や短期の定期預金にしてもインフレリスクに弱いとは知っているが、広義での投資に手を出すことはすまいと思っている。当方の敬愛する故・山本夏彦翁は「株は素人が手を出すものではない」と言っており当方も激しく共感しているからだ。


内容(「BOOK」データベースより)
「高金利」「元本保証」を謳い文句にした金融商品は、FXよりも危ないギャンブルだった。投資家のリスクを回避するために開発されたはずの金融技術は、メガバンクや証券会社が暴利をむさぼるために悪用されていた。日本中にまき散らされた“汚染”が、自治体や大学、企業、病院や公益法人など、この国の未来を支える幾多の組織を蝕んでいる―。ベストセラー『金融工学の悪魔』『スタバではグランデを買え!』の著者が緊急告発。


本書では、余談として「最強の金融商品」として「ネット専業銀行の普通預金」が挙げられている。平たく言えば、長期の元本保証の金融商品よりも手元流動性を確保しておいたほうがインフレ時の対応がすばやくできる、というのがその主張だ。著者の言うとおり、そのあたりの信条は人それぞれであろうが、当方としては賛同できる。

閑話休題。本書ではあたかも低リスク商品として売られているPRDC債やFXターン債が非常に危険なデリバティブ派生商品であることを説明したうえで、それらが地方自治体や大学により運用されている状況を記述している。

どこがどう危険なのか興味がある方は本書を読んでいただくとして、なるほど、元本保証とはいっても30年近い超長期に亘ってはその意味がまるで違うことがわかる。この手の話を理解するには貨幣の現在価値というのが重要な概念なんだろう。

前述したこれらの金融商品を購入した団体が拡大した図式は「汚染」というよりはむしろ「感染」とも言うべきもの。実際に著者の言うシナリオ通りに事態が進むか否かはわからないが、話半分としたってその破壊力は強大なものだと思う。

本書における著者の主張は、上記のように不健全な金融商品を販売するのは詐欺に近いものであり、健全な金融取引を確立するための行政指導や仕組みを作り上げることだ、ということだろう。それ以前に、「そんなにおいしい話は転がっていない」という素人衆への警告の書とも読める。

惜しむらくは、特定の法人に対して執拗に言及するなどやや感情的な記述がみられること。もう少し冷静な記述であればなおさらデリバティブ汚染の深刻さが伝わるのでは、と思った。

とはいえ、読みやすくわかりやすい語り口調によりするすると読める快作であることには違いない。興味のある方には一読をお奨めしたい。


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関係者

この本の内容はかなりいい加減です。
業界の人間が見れば誰でもわかる、事実も実態もまったく理解していない人間の書いたものが世の中に出回ることは残念です。
そもそも債券のことやデリバティブの仕組みを知らない人が、こういったものを書くことには無理があるのです。
by 関係者 (2010-03-21 16:09) 

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