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瀬川深:『ミサキラヂオ』(早川書房) [book]

ミサキラヂオ (想像力の文学)

ミサキラヂオ (想像力の文学)

  • 作者: 瀬川 深
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2009/03
  • メディア: 単行本

久しぶりにおもしろい小説を読んだという満足感を与えてくれる作品だ。もし、本書が気になっている方がいるならば、迷わず手に取ってレジへ行ってほしい。あるいはAmazonでポチッとしてほしい。以上。


内容(「BOOK」データベースより)
半島の突端にあるこの港町には、ここ半世紀景気のいい話などなかった。だが、演劇人くずれの水産加工会社社長が、地元ラジオ局を作った時、何かが少し変わり始めた。土産物店主にして作家、観光市場販売員にしてDJ、実業家にして演歌作詞家、詩人の農業青年、天才音楽家の引きこもり女性、ヘビーリスナーの高校生―番組に触れた人々は、季節が移り変わる中、自分の生き方をゆっくりと見出してゆく。自分勝手な法則で番組と混沌とを流し出す奇妙なラジオ局のおかげで…。港町にある小さなラジオ局を舞台に、ひそやかに生きる人々が交差する、太宰治賞作家の意欲作。


というわけにもいかないので簡単に所感など。大枠としてマジックリアリズムの手法が取り入れられている。Wikipediaによれば「マジックリアリズム、マギッシャーレアリスムス(Magischer Realismus)、魔術的リアリズム(まじゅつてきリアリズム)とは日常にあるものが日常にないものと融合した作品に対して使われる芸術表現技法」とのこと。

本書で言えば三浦半島と覚しき地方のFMラジオ局が法則性なく時間がずれて放送されることが非日常的なものか。そのラジオ局に集う人物たちが非常に魅力的に描かれている群像劇だ。当方は中年実業家にして演歌の作詞家、そして第三の猫あたりの人物像がいいと思った。

全体にすっとぼけた物語ながら登場人物たちに寄せる著者の目は暖かい。具体的に小難しい論議をさせているわけでもないのに「生きる」とは 、「人生」とはなんなのかを真摯に考えさせられる物語だ。舞台は近未来ながら、人間なんて時代が変わってもそんなに変わらないよ、というスタンスが好もしい。

とにかく、派手な展開もなく魅力的な謎が解明されるわけでもないのに、巻置く能わずで一気に読める稀有な小説作品。騙されたと思って読んでくれ。ほんとにおもしろいんだから。


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