今野敏:『疑心―隠蔽捜査〈3〉』(新潮社) [book]
一般的には古いとされる言葉がわりと好きだ。"背広"とか"衣紋掛け"とか言うとバカにされるのだが。でも、当方にはしっくり来る言葉で、スーツとかハンガーとか言いたくないと思う。このへんは唐変木なのか。
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内容(「BOOK」データベースより)
キャリアながら息子の不祥事で大森署署長に左遷された竜崎伸也。異例の任命で、米大統領訪日の方面警備本部長になった彼のもとに飛び込んできたのは、大統領専用機の到着する羽田空港でのテロ情報だ―。
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まず申し上げておかなければならないのは『 隠蔽捜査 』とその続編である『 果断―隠蔽捜査〈2〉 』を読んでからでないとその魅力が掴みきれないこと。もちろん、前二作を読んでおもしろいと思った人は躊躇わずに手に取っているとは思うが。
とにかく主人公の竜崎のキャラクタで読ませる作品だ。ある意味、プロットなんてバレバレで小説の結構で読ませるような本じゃないから、そのあたりを求める人にはつまらないかもしれない。
当方にとって痛快なのは、どんな立場にあろうとも自分を曲げない主人公の強い意志だ。一方で、一作目の単なる嫌みな野郎から、徐々に成長を遂げている主人公の姿も好もしい。
今回、主人公はある強力な障害に悩まされるのだが、なるほど、と男ならわかるような側面もあり、単なる唐変木として描かれるだけでなく人間的な一面も垣間見せてくれる。
その他、一匹狼の所轄暑刑事など魅力的な脇役を配する一級品のエンタテインメントとなっている。前二作をお読みでない方は三冊纏めていってしまえ、とお奨めしておこう。
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