夢枕獏:『荒野に獣慟哭す 完全版』(実業之日本社) [book]
これまでのエントリを読んでいた方はご存じの通り、最近また著者の小説を読み始めている。しばらく遠ざかっていたのは、いつになったら完結するかわからない物語が多いため。
本書はその点の心配がなく、5巻ものの合本完全版だ。というか、当方は1,2巻は持っているし読んでいたはずなのだが...
[BOOKデータベースより]
御門周平は大脳病理学研究所所長の川畑総一郎の助手だったが、自ら志願してニューギニアの奇病ウィルス独覚菌を、脳に植えつけられた。ために超人的な肉体と格闘能力の保持者となる。その代わり記憶を失い、何者かに襲われる。川畑と手を組んだ土方重工業は、兵器産業にも手を染め、戸籍上死んでいる自衛隊の幽霊部隊ゾンビストを組織し、彼らに独覚菌を接種して獣化兵と呼ばれる獣人たちを造りだした。獣化兵は牛、虎、鳥などの姿を体現している。御門を襲ったのは、彼らだったのだ…
自分でも驚いたのは既読本の内容をほぼ100%覚えていないということ。1巻目が1990年の出版だもの。18年前。当方が学生時代に読んでいたということだ。そりゃ忘れる罠。
さて、あとがきにもあるように、伝奇バイオレンスや秘境冒険譚・格闘もののジャンルをクロスオーバーさせた非常によい意味でのB級作品に仕上がっている。とにかく、読んでいておもしろいのだ。
著者もストーリーの流れに身を任せて書いている印象で、そういう意味では行き当たりばったり的な展開がなきにしもあらず。しかし、そこがいいともいえるのは著者の小説ならでは。
当方のように途中まで読みかけてほっぽらかしにしている方がいたら読み直してみては。放っておくと品切・絶版になっちゃうかもだ。
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