SSブログ

川端裕人:『リスクテイカー』(文芸春秋) [book]

リスクテイカー (文春文庫)

リスクテイカー (文春文庫)

  • 作者: 川端 裕人
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2003/10/11
  • メディア: 文庫

当方の勤務する会社はいわゆる401kを制度として持っているが、当方自身は前払いでもらっている。本来的には自身で運用する原資とすべきものであるのだが、結果として単純に貯蓄に回っている格好になっている。それを除いても元本保証以外の資産運用はしていない。一般的に安定しているといわれる市場追随型の投資についても、現況のスタグフレーション下では物価の上昇に追随できないだろうと思っている。どうしてもキャッシュを貯めこんでしまう性分らしい。


内容(「BOOK」データベースより)
「9・11以前」のニューヨーク。ビジネス・スクール卒業後、ヘッジファンドを旗揚げした3人の若者が、伝説的ファンドマネジャーの出資によってウォール街に挑戦状を叩きつける。最先端の経済物理学を駆使して、国際為替市場に仕掛けた3日間戦争…そのスリリングなマネーゲームの結末に見える「マネー」の正体とは。


ここまで著者の作品は『 エピデミック 』,『 ニコチアナ 』と紹介してきた。本作はこれまででもっともおもしろいと感じた作品だ。まず個性的な登場人物たちがいい。語り手は日本の都市銀行からドロップアウトしMBAを修了した男、相棒はユダヤ系のミュージシャンの同窓生。そして彼らのブレーンになるチャイニーズアメリカンの若き天才物理学徒。脇を固める連中も個性豊かすぎて濃いほどだ。物語自体はは青春小説のように始まり、このまま行くかと思えば中盤が終わってから俄然盛り上がる。終盤のスリリングさは、わけがわからんが迫力たっぷり。

読了して感じたのは、著者のテーマが「世界と自分の関わり方」とか「世界を認識する自分」とか、曖昧な言葉なんだけど、そんな基軸で書いているように思った。『ニコチアナ』がニコチンと人類の関わりによる世界認識の変化であったように、本作はマネーと人類の関わり方についての著者の世界観を表しているように感じた。なーんていうと小難しいように思えるがエンタテインメントとして充分に楽しめる秀作。文庫本760円(税込)の回収は堅いぞ。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。