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東海林智:『貧困の現場』(毎日新聞社) [book]

貧困の現場

貧困の現場

  • 作者: 東海林 智
  • 出版社/メーカー: 毎日新聞社
  • 発売日: 2008/08/29
  • メディア: 単行本

高校時代は、何らかの理由でお弁当が作られていなかったときに500円を渡され、「これで何か食べなさい」と言われたカネで文庫本を買っていた。高校へは最寄の駅からバスで行っていた。終業式近くで定期券が中途半端な時期にはその代金を着服し映画を観たりした。いまから思えば短期でもなんでもアルバイトすれば良かったかもとも思う。親から禁止されていたからいかんともしがたかったが。

とはいえ別に貧乏だとも思わなかったし、あの頃はあの頃で工夫しておカネを回していた。もちろん、衣食住で困るということはなかったし。そりゃ、まあ、お洒落はできなかったけどね。そんな当たり前の生活をさせてくれた親のありがたさを今更ながらかみしめている。

さて、本書は毎日新聞社の記者による近年における「貧困の現場」のルポルタージュ。全11章にかけて現代における貧困の様相を報告している。当方なりに著者の主張のポイントと思える点をいくつか抜き出してみた。
  1. 貧困は今になって発生しているのではなくこれまで隠されてきた。
  2. ただし、今の貧困は昔のそれとは社会の構造の変化(構造改革路線、成果主義、派遣法改正、規制緩和など)によって変化してきている。
  3. 変わらないのは社会的弱者に対しての冷たさや、「貧困の連鎖」だ。

非常に大雑把にまとめてみたのだが、1.に関しては確かにそれは言えそうだ。著者は若い頃から山谷や西成を取材していたようだが、当方は少年の頃、そんなところがあるとは思ってもなかった。あるいは当方の周りにも隠された貧困はあったのかもしれない。

2.に関しては、派遣法改正により西成地区の日雇労働者から仕事が奪われるまでの過程が記述されている。法改正やテクノロジーの進化(携帯電話)で「寄せ場」が機能しなくなったから、と著者はいう。 労働が取引される商品になってしまった、というのは、なるほどと頷ける指摘だ。

3.については、シングルマザーや突然に職を失ってしまった人、そして海外からの外国人労働者などの状況が報告される。特に外国人労働者に対する収奪構造については慄然としてしまう。

著者の主義主張によるバイアスはあるだろうから、事実の一面しか照らしていないという部分もあるだろう。それにしても、これが今、自分の生きている社会の一面だと思うとやるせない気持ちになってしまう。とにかく、当方にできるのは、これら様々な状況を多く知ることしかないと思う。


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