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眉村卓:『消滅の光輪』(東京創元社) [book]

消滅の光輪 上 (1) (創元SF文庫 ま 1-2)

消滅の光輪 上

  • 作者: 眉村 卓
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2008/07
  • メディア: 文庫
消滅の光輪 下 (3) (創元SF文庫 ま 1-3)

消滅の光輪 下

  • 作者: 眉村 卓
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2008/07
  • メディア: 文庫

暑いのだ。クーラーが壊れている。直すには少々古いし、新しいのを買うには時機を逸してしまった。近所のモスバーガーに涼をとりに行っているくらいである。とはいえ、子どもの頃はクーラーなんかなかったし、扇風機と窓からの風でやり過ごせないではない。なんか、このままでもいいかと思う。時折肌寒さで目が覚めるのも乙である。クーラーになれてしまっていた自分に喝が入った思いだ。

でも暑い。読書の大敵は暑さと知った。何しろ、今月の読了した一冊目(上下巻だけど)が本書なのだから。とにかく本を読む気になんかならない。そんだったら、外に出かけて陽の光に当たっているほうがましだとさえ思う。集中ができない。だから夏休みってあるんだなあと思う今日この頃。そういえば、最近の小中学校・高校はクーラーってあるんだろうか。子どものいない当方には謎の世界だ。


内容紹介
泉鏡花文学賞・星雲賞受賞】 植民星ラクザーンでは、人類と瓜二つの穏和な先住民と、地球人入植者とが平和裡に共存していた。だがその太陽が遠からず新星化する。惑星のすべての住民を、別の星に退避させよ──。空前ともいえるこの任務に、新任司政官マセ・PPKA4・ユキオは、ロボット官僚を率いてとりかかるが……。《司政官》シリーズの最高作にして眉村本格SFの最高峰。


さて、本書の親本の出版は1979年。なんとほぼ30年前だ。当方が中学一年生のとき、友人のMくんが読んでいたのを思い出した。ちなみにMくんが読んでいたのは文庫で、ハードカバー出版3年後のの1981年。当時13歳の当方は、まさか40歳になって読了するとは思わなかったろう(当たり前)。

さて、読了して思うのは古びない小説ってあるんだなあ、という当たり前のことだった。いや、もちろんロボット官僚のディティール(官僚親玉ロボットが地下深く埋められた人工知能であるとか)などハードウェア面での古さは否めない。でも、そんなことはどうだっていい。小説としての力強さが間違いなくある。たとえば、主人公であるマセ・PPKA4・ユキオの部下がロボット官僚ではなく人間の優秀な官僚だったとしたら、もっと分厚い小説になる可能性はあるにしろ本質は変わらないだろうと思うからだ。

そんな見た目のSFっぽさが本書をSFたらしめているのではないと言いたい。惑星の全住民を他の植民惑星に待避させるというスペキュレイティヴな設定や、植民惑星の先住者とはどんな存在なのかというSFの枠組みと、それらが人間をどう変えていくのか、というところに凄みがあり、その凄みが間違いなくSFでしかできないと言うところがやっぱり凄い。

また、職責にストイックなまでに忠実な司政官という人間は、会社員である当方にとっては憧れの対象だ。だってサボりたいし<当方。ところが、そんなある意味では身近にいそうな努力するヒーローを活写する小説ってあんまりないと思う。

とにかく、こんな凄い小説が文庫とはいえ上下・計2,000円(税抜き)で読めるのだからいい世の中だ。ジャケットの加藤直之氏のイラストも相変わらず素晴らしい。まだまだ世の中捨てたもんじゃないっすよ。

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