マイクル・コーニイ:『ハローサマー、グッドバイ』(河出書房新社) [book]
なにはともあれ一言申し上げたい。
スゴイぞ! 河出書房新社!
2008年の夏は出版不況だ。本屋さんも出版社も破綻するところがいっぱいあって、取次といわれる出版流通会社(日販とかトーハンとかね)も青息吐息だ。本も雑誌も売れない。情報誌なんてもうその役目を終えているのは、この前のどこぞの騒ぎをみてもわかるだろう。
大量に本を読みたい人は図書館で借りたり新古本屋で買ったり、マンガ喫茶に行ったりするだろう。そりゃそうさ、食うもの食わなきゃ本だって読めない。流れ者にだって洗面器は必要だ。本屋さんのライバルは、スーパーや薬屋や洋服屋(特にユニクロ)だぞ。買わなくたって死なないのが本だもんね。
でもさ、そんな世界ってほんとに楽しいのか? なにかにプログラミングされたようにおうちと会社を行ったり来たり、あくせく働いて衣食住さえ足りていればそれが人間なんだろーか。
両親と買い物についていってやっと本を買ってくれた中学時代、バスの定期代を横領し歩いて通ったり昼飯抜いて本を買った高校時代、アルバイトを始めて本を買う金に困らなくなったが食う金に困った大学時代、本代だけは青天井の今を過ごしている俺としては、やっぱり本は人生を豊かにしてくれるものだと信じている。
そう、あの『ハローサマー、グッドバイ』だ。20年前から読みたかった本。生きているうちに読めるとは思わなかった。大袈裟だと思うだろう。でもほんとにそうなのだ。出ているとわかった瞬間に近所の本屋さんに走った。こんなの何年かぶりだ。そしてこの本を復刊した河出書房新社の英断を素直にスゴイと思った。
そして読み終わった今、なんともいえない寂しさにおそわれていることは正直に言わねばならない。小説としての完成度は『ブロントメク!』に軍配を上げざるをえないし、なにしろ子どもがわーわー喚いているような小説って好かんのだ。
でも、マイクル・コーニイだ。どこを切っても。読み終わったとき、二十歳頃にあの『ブロントメク!』を読んで感じた思いを感じている俺と変わらない俺がいた。そんな小説ってのもあるのだ。
もし少しでもSF小説に興味のある人で、それが学生なら昼飯抜いて買え、と言おう。それが会社員なら、やっぱり昼飯抜いて買え、と言おう。とにかく買え。いまや絶滅危惧種となっているSF好きとしてはそう言わざるをえない。
翻訳された方はもちろん、「夏に出さないわけにはいかないでしょう」と言われた編集者もひっくるめて、改めて申し上げる。
よくやった! 河出書房新社!
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