松山巌:『猫風船』(みすず書房) [book]
東京の路地に郷愁を抱く人間ではないが、確かにネット上で見られる路地の写真はどことなく懐かしさを感じる。でもそのような環境で暮らしたことのない当方にとっては、なにか植え付けられた記憶のような居心地悪さもまた感じるものだ。
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内容紹介
林立する超高層ビル群の下、都心の日常はなんだかおかしい。路地には乳房そっくりの花を咲かせた「ヒトデナシ」(?)。カレーの匂いが漂うやたちまち姿を現し駆け抜けてゆく「消防団」。平均年齢75・56歳、パジャマ姿の老人ばかりが憩う「ホホエミ食堂」。東京ウォールの汐留シオサイト一帯は、色あざやかな熱帯植物に覆われて、ビルも人もくにゃくにゃ曲がり出す。そのほか背丈20センチ足らずの凶暴ゴジラ、用途不明のロボット、飛べない酒好きのデブ天使も続々と登場。ちょっとウツな「私」の前に春夏秋冬、四季おりおりに開き出される異界の時空間。いや、ついには季節そのものも乱れ始めて「私」は・・・。月刊「みすず」の好評連載「路地奇譚」を構成一新のうえ大幅加筆、『乱歩と東京』『闇のなかの石』『群衆』『日光』の著者が放つ異色の連作掌篇小説全41篇。ユーモアたっぷりブラック満載、これは内田間『冥途』21世紀版ともいうべき「東京奇譚集」です。
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著者の著作を読むのは初めてだが、なんとも言えない不安感やそれでいてそこはかとないユーモアもみられおもしろいとは思う。ただしというかやっぱりというか、2,400円は少しばかり高いなあ。箱入装幀本かと思ったよ、実物を見るまでは。よほど興味のある人にしか奨められません。
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