東川篤哉:『密室の鍵貸します』(光文社) [book]
かなりの方向音痴だ。新宿・渋谷・池袋あたりでは、事前に調べておかないと、まず目的地に最適の出口から出られない。大阪の梅田なんて、下手したら遭難しそうである。うろ覚えだが、渡り鳥たちが正確に目的地を目指して飛べるのは脳の中に磁性体があってそれが方向磁針の役割を果たすから、と聞いたことがある。おそらく当方の脳には磁性体が恐ろしく少ないか、もしかしたらないのかもしれない。
なんでこんなことを書くかといえば、本書の舞台である「烏賊川市」が《千葉の東・神奈川の西》にあるとのことで、東西南北の感覚がない当方としては頭がぐらぐらしたからだ。
さて本書はそんな架空の地方都市である烏賊川市を舞台にしたユーモアミステリで著者の処女作。ググってみるとどうやら以降は舞台や登場人物たちを同一にしたシリーズとなるらしい。この手の作品よくある強烈な個性を持った登場人物たちがバタバタするというスラップスティック系ではなく、語り口と登場人物たちの掛け合いで読ませる小説。目茶苦茶におもしろいというわけではないが、気になるシリーズではあるので以降の作品も購入することにしよう。
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