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香納諒一:『ステップ』(双葉社) [book]

 

ステップ

ステップ

  • 作者: 香納 諒一
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2008/03/19
  • メディア: 単行本

帯でネタバレかよー(このエントリにもネタバレあり、白文字にしています)。

雑誌で連載されていたから、一章ごとに[主人公が死ぬ]というのは相応に意表を突かれたに違いない。なので、このように一冊にまとまり帯で「その日、俺は、八回死んだ」などとかかれてはストーリーの意外性がもったいないのでは。ましてや、アイデア自体は[ケン・グリムウッドの『リプレイ』]の本歌取りなので新味がないとはいえるのだから。『リプレイ』のあのアイデアはワン・アンド・オンリーの小説のジャンルを打ち立ててしまった。「リプレイ」というジャンル。あのアイデアを使用した時点で、「ああ、『リプレイ』ね」となってしまう。それぐらいの傑作だ。あの新潮文庫でもいまだに版を重ねているのがその証左だろう。

閑話休題。作品について。主人公は、今は横浜でバーを営む斉木。裏の顔は盗みのプロ、という設定だ。にもかかわらず、行動が直情的すぎるきらいがあり少しリアリティに欠けるかな、と思った。それに[発信機]についても、もっとすぐに感づけよ、というところ。そんなんじゃ、すぐにムショ送りになっちゃうよ。

そんな主人公の性格付けは、植物人間状態になっているかつての相棒の加山との対比を際立たせるためなのかもしれないけど。なので、いちばんいいシーンは彼と一瞬だけ目を覚ました加山とのやり取りだった。

最近、『バンテージポイント』について語った。あの映画のすごさは同じシーンが何回も繰り返されるにもかかわらず退屈にならないこと。それは8つの視点があったからだろう。その点で本作は一人称の主人公が比較的短い時間で同様のシチュエーションで翻弄されるから、やや冗長な印象となってしまっているように思える。

もちろん、最後まで読みきったのでつまらないということはないです。期待が大きく食い足りなかっただけかも。ただし2,100円の単行本ではややコストパフォーマンスが厳しいかな。


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