細野祐二:『公認会計士vs特捜検察』 (日経BP社) [book]
ノンフィクションノヴェルかと思い読み始めたら、実際に告訴された公認会計士の手記でびっくり。舞台となった企業も実在していて、上場廃止・民事再生後も再生して営業している。思うところを箇条書きでまとめてみた。
- 冒頭、著者が検察官から苛烈な尋問を受けるのだが僕だったら怖くて泣き出しちゃうだろうなあ、という迫力。
- 『エスピオナージ』や『悪果』を読むと、警察はヤクザと変わんないじゃんと思うが、検察もほとんど同じなのか。
- 場面は過去にさかのぼり読み進めると、起業後から上場までの企業の内実が描かれ、これまた、こういう結末に突き進むだろうなあ感がありあり。
- ベンチャー企業が上場するとこうなる、というような典型。具体的にはどこやらの有象無象が湧いて出ておこぼれを掠め取ろうと暗躍する様がどろどろ。
- 一方で、せっかく上場したのに、個人事業主の意識が強く会社を自分の財布と思っているような経営者が醜悪。
- さらに株価をめぐって仕手筋や詐欺師まがいの人間まで登場。
- なまじっか、将来性がある高収益企業だとそうなるのか。
- 著者は事態を収拾しようと奔走するが、経営幹部たちの身勝手な動きで全容が把握できなくなる。
- 事態は一旦は収束に向かったと思えたが、経営者たちが株価操縦・粉飾決算の容疑で逮捕されるにあたり共謀の容疑をかけられる。
- その後一審で有罪後、保釈中に関係者から証言や証拠を集め始め苦闘する著者。
- 会計士だけあり、会計理論面から粉飾決算の意味自体がないことを喝破し二審へもつれこむも棄却。
- この一連の流れのうち真実が50%程度だったとしても個人事業主的な上場企業経営者の実態・検察の横暴・裁判所の石頭など、怖さいっぱい。
- でも、著者も同社に入れ込みすぎと思うし、10百万円も受け取っておきながら自分の事務所に置いたままなんて脇が甘いと思う。
- 下手なホラー小説よりも怖いので、怖いものが好きな人は読んでみてください。
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