小野不由美:『残穢』(新潮社) [book]
内容(「BOOK」データベースより)
この家は、どこか可怪しい。転居したばかりの部屋で、何かが畳を擦る音が聞こえ、背後には気配が…。だから、人が居着かないのか。何の変哲もないマンションで起きる怪異現象を調べるうち、ある因縁が浮かび上がる。かつて、ここでむかえた最期とは。怨みを伴う死は「穢れ」となり、感染は拡大するというのだが―山本周五郎賞受賞、戦慄の傑作ドキュメンタリー・ホラー長編!
基本的には「読んでから観る」派なのだが、本作は映画鑑賞後の読了ということになる。映画版は雰囲気も含めてかなり原作に忠実なものだった、というのが感想。いや、久保さんは30代の編集兼ライターという設定ではあるのだが。
ドキュメンタリタッチの手法は、ホラー小説では今まであったようでいてないもので、そこに新しさはある。切れかかった糸を丹念にたどり紐解くという主人公たちの行動にスリルがあるのだ。なので、ホラー小説かといわれるとそれほど怖くはない。
おそらくは著者の実生活や実在の作家たちが登場する場面など、虚実ないまぜでリアリティを追及するところは映画版より優れていると感じた。だから「読んでから観る」ほうが愉しめるし、そうなると映画版は少し物足りなくなるかも。
◎関連記事
『残穢』