「人口の波」で出版市場を解釈してみる[1] [a day in the life]
出版不況と言われ続けて何年になるだろうか。その原因については、曰く「(若者の)活字離れ」、「娯楽の多様化」、「ケータイやネットの普及」などいろいろな意見がある。
また、活字離れはしておらずむしろ需要は増加しているという見方もある。意味するところは、活字の入手方法が変化しているということだ。すなわち「図書館で借りて読む」、「ブッ○オ○等で新古本を購入する」などで、新品の市場が減少しているということだ。
さて、そんな数多の意見があるなかで、当方は先般エントリした『 デフレの正体 』の手法を援用し、試みに出版市場を「人口の波」で解釈してみようと思い立った。
どうという理由もなく、とりあえず1989年から2009年までの、10代から60代までの年齢別の人口データを入手。そして、書籍・雑誌の販売額のデータを、これまたネット上から入手する。
それぞれを並列させMS Excelでグラフを作成すると下掲のようなものになった。
いやはや、これはなんというか、刺激的というかあからさまというか、わかりやすいグラフになっちまったよ。とはいえ、あさはかな憶測をする前にまずは状況を把握することにしよう。いずれもグラフの期間内から読み取れることに限定する。
- 10代人口は1989年以来、右肩下がり。
- 20代人口は90年代後半を境に緩やかな減少傾向。
- 30代人口は、20代人口をちょうど逆さまにしたような曲線を描き、2000年以降増加傾向。
- 40代人口は、1996年を境に減少したが、近年はほぼ横ばい。
- 50代人口は2000年代前半は横ばいだが、2007年以降は減少傾向。
- 書籍販売額は1996年を、雑誌販売額は1997年を頂点に右肩下がり。
と、まあ、そんなところか。では、ここからは当方の解釈。
- 10代・20代人口の減少は、雑誌の販売額にあきらかに影響を与えている。大雑把にみると、40代人口の減少も影響がありそうである。
- 逆に、1990年代半ばから増加傾向にある30代・50代人口は、出版販売額の増減への影響が少ないようにみえる。
上記から、導き出される仮説は
雑誌を購入しているのは、主として10代~20代の人
ということか。ここでいう雑誌のうち、多くの割合がマンガ雑誌なのではないかと推測される。示唆的なのは、雑誌販売額が頂点になる前々年の1995年に「少年ジャンプ」が653万部という漫画雑誌の最高発行部数を記録したということ。マンガ雑誌の購入をが多そうなのはこの年齢層だし、新書版のマンガ単行本は雑誌販売額のカテゴリにはいるからだ。
(続く、か?)
【グラフ作成で利用した数値】
年度 | 10代人口 | 20代人口 | 30代人口 | 40代人口 | 50代人口 | 書籍 販売額 | 雑誌 販売額 |
1989 | 18,882 | 16,756 | 17,457 | 19,292 | 15,640 | 8,484 | 11,916 |
1990 | 18,583 | 16,923 | 16,837 | 19,730 | 15,855 | 8,660 | 12,638 |
1991 | 18,133 | 17,375 | 16,358 | 19,859 | 16,144 | 9,444 | 13,341 |
1992 | 17,618 | 17,849 | 16,030 | 19,822 | 16,439 | 9,637 | 13,923 |
1993 | 17,057 | 18,301 | 15,847 | 19,735 | 16,647 | 10,034 | 14,866 |
1994 | 16,510 | 18,658 | 15,803 | 19,470 | 16,916 | 10,376 | 15,050 |
1995 | 16,052 | 18,706 | 15,966 | 19,645 | 16,894 | 10,470 | 15,427 |
1996 | 15,580 | 19,130 | 15,777 | 19,789 | 16,606 | 10,931 | 15,633 |
1997 | 15,181 | 19,082 | 16,076 | 19,007 | 17,173 | 10,730 | 15,644 |
1998 | 14,790 | 18,993 | 16,343 | 18,167 | 17,900 | 10,100 | 15,315 |
1999 | 14,416 | 18,785 | 16,594 | 17,341 | 18,753 | 9,936 | 14,672 |
2000 | 14,060 | 18,247 | 16,924 | 16,746 | 19,211 | 9,706 | 14,261 |
2001 | 13,732 | 17,904 | 17,339 | 16,283 | 19,345 | 9,456 | 13,794 |
2002 | 13,438 | 17,443 | 17,754 | 15,948 | 19,265 | 9,490 | 13,616 |
2003 | 13,116 | 16,965 | 18,169 | 15,788 | 19,183 | 9,056 | 13,222 |
2004 | 12,821 | 16,480 | 18,480 | 15,763 | 18,940 | 9,429 | 12,998 |
2005 | 12,583 | 15,631 | 18,491 | 15,807 | 19,051 | 9,197 | 12,767 |
2006 | 12,431 | 15,327 | 18,916 | 15,676 | 19,244 | 9,326 | 12,200 |
2007 | 12,265 | 15,033 | 18,789 | 15,953 | 18,484 | 9,026 | 11,827 |
2008 | 12,139 | 14,735 | 18,605 | 16,187 | 17,660 | 8,878 | 11,299 |
2009 | 12,028 | 14,415 | 18,306 | 16,407 | 16,873 | 8,491 | 10,864 |