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2011年01月の読書メーター [a day in the life]

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『紙兎ロペ』 [dvd]

紙兎ロペ [DVD]

紙兎ロペ [DVD]

  • 出版社/メーカー: 東宝
  • メディア: DVD

大抵の男性ならば、かかってきた電話に出たときに(いわゆる家電ね)、相手がわけのわからぬことを言ってきて茫然としていると、「ああ、お父さんかと思った」といわれた経験があるはずだ。女性でも、「お母さんかと思った」といわれることがあるらしい(妹談)。人は顔のみならず声まで親に似るのだなあ。


内容(「キネマ旬報社」データベースより)
紙兎・ロペと紙リス・アキラ先輩のふたりが映画館に行くまでの珍道中を描いたショートアニメ。「ラスイチ」「携帯ゲーム」「海」「闘牛」「赤白ぼうし」「ほおぶくろ」ほか、TOHOシネマズで幕間上映された11エピソードと新作エピソード5本を収録。

そんなことを言い出したのは、本作で紙リスのアキラ先輩がかかってきた電話で田舎のおばさんに父親にまちがわれるというエピソードがあったから。なんかね、家電ということで昭和の感覚が蘇ってきたのだった。

ご存知の通り、本作はTOHOシネマズの本編上映開始時間前に上映されていたショートムービーを纏めたもの。実は当方はこれが上映されているあいだはほとんど同館に行っていないものだから、全15話のうち2話しか観ていない。できればリアルタイムに観たかったものだ。

で、こうやって纏まったかたちで視てみると、紙兎ロペと紙リスのアキラ先輩が話している背景の空間描写が素晴らしいことに気づく。まさに昭和の下町にある風景であり、電柱に電線が複雑に絡まり合っているとか、ヒビを修繕した後の建物の様子とか「あるある! 」という感じだ。

監督の内山勇士は当方と同年代に違いない、と思って確認したら実はまだ30はじめの人らしい。逆に言えば、そのくらいの年代の人だからこそ、ゴミゴミとしつつも懐かしい近過去の昭和の風景の新しさを表現できたのかもしれない。ロペとアキラ先輩のゆるくて脱力した会話も愉しめるショートムービー集。とぼけたおもしろさを好む人にお奨めしたい。


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堂場瞬一:『蝕罪―警視庁失踪課・高城賢吾』(中央公論社) [ebook]

蝕罪―警視庁失踪課・高城賢吾 (中公文庫)

蝕罪―警視庁失踪課・高城賢吾 (中公文庫)

  • 作者: 堂場 瞬一
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2009/02
  • メディア: 文庫

内容(「BOOK」データベースより)
行方不明者を捜す専門部署として、警視庁に設立された失踪人捜査課―実態は厄介者が寄せ集められたお荷物部署。ある事件により全てを失い酒浸りになった刑事・高城賢吾が配属される。着任早々、結婚を間近に控え、なぜか失踪した青年の事件が持ちこまれるが…。待望の新シリーズ、書き下ろしで登場。


5冊目の電子書籍読了作品は堂場瞬一の警察小説シリーズ第一作。文庫売場では何度も見かけてはいたが、どことなく食指が動かなかったのだが、作家生活10年目ということで、ここは読んでみるか、という気になったのだった。

結論から申し述べると、娯楽小説としての水準の高さを充分に堪能できる一冊だ。とにかく、読み始めるとなかなか止まらない。枠組みは「かつて名刑事としてならした主人公がとあることをきっかけに酒浸りになったが、環境の変化と仲間たちの助けで自身の再生を賭け捜査に情熱をそそぐ」という、良くも悪くもテンプレ通りのもの。

そういう意味では、トラウマを抱えているはずの主人公にそれほどの屈折がみられないことや、充分に社会性のあることは瑕疵かもしれない。上司や同僚・部下に対して、どんな状況でも「ああいえばこういう」タイプであるのも、なんかね、たくましすぎるんじゃないのか、という感じだ。とはいえ、そんな主人公だからこそ陰々滅々とした雰囲気を感じさせずに読み進められたと言うことも事実。

ミステリ部分では、失踪した人物の生死やその理由が終盤になってもわからないということで、読者の興味を牽引していくという構成力の確かさがある。ただ気になったのは、捜査が展開するきっかけに偶然を多用しているところ。あきらかにご都合主義となってしまっているところだ。

あと、主人公の人柄ゆえかもしれないが、警察組織内部であれだけの協力者ができるのかどうかということ。こればっかりは警察官になったことがないからわからないけどね。警察官にもいろいろな人がいるんだろう、ということにしておくか。

シリーズは既に第五作目まで刊行されている。電子書籍版も同様。主人公を取り囲む失踪課の面々の人となりが詳しく語られていくのは次巻以降だと推測しているので、とりあえず 第二作目は購入することにしよう。細かい点で気になることはあるのだが、何しろ冒頭にも申し上げたようにおもしろいことには間違いないのだから。


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Amazonベーシック レザーケース ブラックがやってきた [a day in the life]

下記のエントリでご紹介したデジタル・オーディオ・プレーヤー(以下DAP)が突然壊れてしまった。

Transcend:T.sonic 320 TS8GMP320がやってきた[ハードウェア編]
Transcend:T.sonic 320 TS8GMP320がやってきた[インプレ編]

雪道を歩きながら聴いていたら、突然死。最初は充電切れかな、と思ったが、ついこの前に満タンにしたはずなのに、とパソコンのUSBに刺しても反応なし。電源系の回路がいかれたのか。直したら購入時価格を上回るだろうことは間違いなし。4,980円のDAPだから、2年で壊れるのは長いか短いかわからないが、まあこんなもんか。減価償却は終了していると思っておこう。

とはいえ、DAPがないとちょっとした暇つぶしができないので、他の商品を物色したのだがなんだかめんどくさい。ここのところ物欲が減退傾向にあるのは財布にやさしくていいのだが。で、しばらくほっぽらかしにしていたスマートフォン"HTC Legend"をDAP代わりに使ってやろうと思い立った。とりあえず2GBのMicroSDは突っこんであるので充分だろう。いざとなったら16GBのMicroSDもあるし…■━⊂( ・∀・) 彡 ガッ☆`Д´)ノ

ところで、HTC Legendを持ち歩かなくなったのは、なんかね、非常に丁寧に扱ってやらないとすぐに傷だらけになりそうだったから。そういう点でT.sonic 320は乱暴に扱えるということが、当方には性能の一部だった。だから壊れたのかもしれないけど。

さて、HTC LegendをDAPとして再び現場復帰させるためにはケースが必要だと思い、本品を購入。もともと小柄なHTC Legendだから問題なく収納できた。出し入れ口が楔形になっているので、よっぽど乱暴に扱わない限りすっぽ抜けたりはしないと思う。表裏面には防護用の板のようなものが内蔵されているから、カバンに放り込んでおいてもそんなに心配しなくて良いだろう。

とりあえずこれで凌いで、物欲が回復してきたらなんか買ってやろーっと……(っ`Д´)っっっ )3 `)・∵.シュビ


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毛皮のマリーズ:『ティン・パン・アレイ』(日本コロムビア) [music]

ティン・パン・アレイ

ティン・パン・アレイ

  • アーティスト:毛皮のマリーズ
  • 出版社/メーカー: 日本コロムビア
  • 発売日: 2011/01/19
  • メディア: CD

書籍・雑誌はいい加減にせいというくらい場所塞ぎなものだが、CDだって量を買えばそれなりに棚の一角を占めるようになってしまう。当方は この手のもの を購入して圧縮に努め、かつMP3にて文字通りの圧縮に努めてきたのだが、抵抗むなしくいつのまにか増えてしまう。

最近はできるだけレンタルで済ましているのだが、本作は待てなかった。どこぞの店で「愛のテーマ」がヘヴィー・ローテーションにかかっているのを聴いて耳に残ってしまったのだった。その後、動画検索などしてみると不思議とうれしくなってしまうPVを発見、購入に至ったのだった。

不思議なのは価格設定で、ご存知のようにCDは再販売価格維持制度に守られた商材なのに、上記のリンクに飛んでいただくとかなりの割引価格で販売されている。なんでだろうと思って調べてみたら、「CDにDVDをセットにして再販商品として定価で販売していたことがあったがこれは公取委により違法と指摘され、現在は再販商品としては販売していない」(Wikipedia)なんですな。知らなかった。

閑話休題。上記のように、当方はそれまでロックバンドである"毛皮のマリーズ"はまったく知らなかった。PVを視て、ヴォーカルの志摩遼平の声と見た目の印象の違いにおどろいたくらいだ。ロックの細かいジャンルはよく知らないが、パンクとかヘヴィメタの人のように見える。実際、インディーズ時代は過激な歌詞でならしたらしい。

ところが、本作を通しで聴いてみると、なんかね、静謐とかやさしさとかせつなさとか、そんな表現がぴったりくるように思えてくる。「東京」をコンセプトにしたアルバムらしいがそんなことはどうでも良いくらい。古くからのファンは「変節しやがって」くらいの思いはあるだろうが、そんな批判は承知という覚悟が志摩遼平のweb上でのインタビュー記事に見て取れる。

印象だけでいえば、70年代の米国ポップス風やらGSみたいのやら歌謡曲そのもののような雰囲気もある。「愛のテーマ」なんてNHKの「みんなのうた」で放映されてもおかしくないくらいだ。そんな雰囲気が40代中年会社員である当方には好もしい。買って良かったと思える一枚。


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東川篤哉:『もう誘拐なんてしない』(文藝春秋) [ebook]

もう誘拐なんてしない (文春文庫)

もう誘拐なんてしない (文春文庫)

  • 作者: 東川 篤哉
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/07/09
  • メディア: 文庫

山口県に旅行に行ったことがある。ほぼ何の予備知識もなく、だ。秋芳洞・萩と周り、翌日はとりあえず福岡に渡ると言う程度の予定で動いた。宿泊後の朝、新山口駅から電車に乗り発作的に下関で下車したのは、確か水族館があるとわかったからだった。

そして、そのとき初めて知ったのが「厳流島」が下関にあると言うことだった。いや、まったく以て恥ずかしい限りだ。もちろん島には渡航し、他にも唐戸市場で寿司などを食した後、船にて関門海峡を渡ったのだった。後で知って悔やんだのは関門トンネルがどうやら徒歩でも通行できるらしいということ。うーむ、歩いておけば良かったなあ。

なんでそんな話をしているかというと、本書が下関と門司を舞台にしているから。同地には上記のような思い出があるから、なんとなくね、懐かしさを覚えたのだった


内容(「BOOK」データベースより)
大学の夏休み、先輩の手伝いで福岡県の門司でたこ焼き屋台のバイトをしていた樽井翔太郎は、ひょんなことからセーラー服の美少女、花園絵里香をヤクザ二人組から助け出してしまう。もしかして、これは恋の始まり!? いえいえ彼女は組長の娘。関門海峡を舞台に繰り広げられる青春コメディ&本格ミステリの傑作。

都合4冊目の電子書籍での読了作品はユーモアミステリ(ギャグミステリ?)とあいなる。狂言誘拐というテーマを著者がどのように料理するかを期待しながら読む。基本的にはライトノベルタッチ(あまり読んだことはないが)のキャラクタやプロットといえる。だから、人は死なないのかなと読み進めていくと、いきなり主要登場人物が殺人事件に遭遇したりする。

一方で、狂言誘拐の片棒を担ぐことになった主人公の青年はあくまで脳天気で、殺人も含めたかなり深刻な状況に巻き込まれているにも関わらず、最後までオフビートだったりするのがリアリティを云々する以前に不条理小説っぽい印象だ。読了すると、そのチグハグさに今一つ納得がいかないと言うことは正直に申し上げたい。もちろん、本書は一種のファンタシィであって、そういったリアリティを求めるべきものではないのだが。

それでもね、読んでいる間の愉しさは充分にあった言えるし、ページを捲る液晶画面を擦る手はなかなか止められないストーリーテリングもある。著者の作品はまだ2作しか読んだことはないが、ギャグのキレはこれまででもっとも良かった。ミステリに鹿爪らしいものを求めないタイプの読者にはお奨めして問題ないかな、と思ったのだった。


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『グリーン・ホーネット』 [movie]

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キャスト: セス・ローゲン、ジェイ・チョウ、キャメロン・ディアス、クリストフ・ワルツ
監督: ミシェル・ゴンドリ
製作: ニール・モリッツ
脚本: セス・ローゲン

■■■
予告編を一回だけ観た記憶がある本作は、観賞意欲範囲内に入るか微妙な線ではあったが、ある時に監督がミシェル・ゴンドリであることがわかったので観賞決定。元は60年代のラジオ・TVドラマらしく、当時は無名時代のブルース・リーが出演していたことで有名(らしい。当方は知らなかった…)。


ストーリー
新聞社の若き社長ブリット・リードが、正義のヒーロー“グリーン・ホーネット”となって夜な夜な悪に立ち向かう姿を描いた60年代の人気TVドラマを、「エターナル・サンシャイン」の鬼才ミシェル・ゴンドリー監督が映画化。主演を務めるのは、「40歳の童貞男」などのコメディ俳優セス・ローゲン。ドラマ版で無名時代のブルース・リーが演じた助手カトー役に扮するのは、台湾の人気俳優ジェイ・チョウ。

結論から申し上げると、これまで観賞してきたミシェル・ゴンドリらしさがある作品とは言い難い。題材が題材なだけに仕方がないのかもしれないが、それにしても脚本がいただけないと思う。

ヒーローものであるのにもかかわらず、感情移入できる登場人物がひとりもいないということが苦しい。セス・ローガン演じる主人公ブリット・リードは映画開始後から終映までヒーローには感じられない、わがままなボンボンとしか思えない。ジェイ・チョウのカトーは悪くはないのだが、いま一歩印象が薄い。

ストーリーは中盤あたりから結末が読め、意外性が少ない。主人公二人が友情を深めるまでのエピソードはあるようなないような、結局は最後まで仲が悪いんじゃないか、という納得のいかないものだ。その二人も、キャメロン・ディアスの出てくるシーンでは食われてしまっている。キャメロン・ディアスをキャスティングしたのは、こりゃミスだわな。ちなみに、あの『 ターミネーター2 』のジョン・コナー役を演じたエドワード・ファーロングが出演していたらしいが、当方には認識できなかった…。

主演・脚本のセス・ローガンがカナダ出身のコメディアンということで、どちらかというとコメディ・アクションくらいに観賞すればいいのだろうが、言葉の壁もあり笑えなかったというのが正直なところ。うーん、ここでは残念な出来の映画だったと言わざるをえないか。

【以下蛇足的ネタバレにて白黒反転文字】
終盤でブリットが、地方検事と会食するシーンで、あれだけ不用意な発言を地方検事がするとは思えない。誰だって録音するだろうと思うはず。その録音したメモリを全世界に発信すると言うことで、二人が自分の新聞社へ向かうのだが、そんなことしなくても近くのネットカフェでyoutubeなりにアップすればいいだけのことじゃないだろうか。まあ、新聞社のサーバから発信することでの信頼性というのはあるのかもしれないけど。なんかね、どこかずれている脚本という気がしたのだった。


◎ミシェル・ゴンドリ監督作品




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カーマイン・ガロ:『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』(日経BP社) [ebook]

スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則

スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則

  • 作者: カーマイン・ガロ
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2010/07/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

のっけから既報の新聞記事の引用で恐縮だが、下記記事をご覧いただきたい。

上記を受けてのニューヨーク株式市場の同社の株価は▲6.5%下落したとのことだから、氏の影響力は計り知れないものがあると言っていいだろう。氏の評伝である下掲の書籍も読んだが、とてつもないカリスマ性を持った人物であると思う。

でもね、上記をを読んで思ったのは、こういう人物が上司なり会社の代表者であったりしたらイヤかもしれないということ。というか、たぶんダメだろう。魅力的だけどイヤなやつという感じがするのだ。


内容(「BOOK」データベースより)
聴衆を魅了し続ける世界一の経営者。iPhone、iPad、iPodを成功に導いたプレゼンの極意を解き明かす。

本書はSONYの電子書籍リーダー"Reader"発売時のローンチタイトルで、期間限定の980円で購入。そして、同機で読んだ3冊目の書籍。実は読了した2冊目の『 これからの「正義」の話をしよう 』は後半以降の難解さでレビューは自粛してしまった。

内容は乱暴に要約すると、同氏のプレゼンテーションを分解し個々の要素が聴く人にどのような影響力を与えるかを分析するというもの。なるほど、個々の要素の分析については肯けるところは非常に多い。例を挙げるときりがないが、たとえば「台本を棒読みするのではなく、練習の積み重ねで自然に話し聴衆とアイコンタクトしなければ伝わりにくい」などというところは大いに同意できる。

だからといって、個々の要素をすべて体得したとしても、同氏のようなプレゼンテーションができるはずがないだろうということも明らかな事実には違いない。これらの要素を総合する力が必要だということだ。結局、その総合力が天分とか才能と言われるものだろうと思う。

じゃあ、当方のような凡人に役立たないかといえばそうでもなく、ここは自分でも応用できるだろうというポイントをひとつずつでも身につけることによって技術を磨くということに有効といえる。全部を一気にではなく、身の丈にあった部分から取り込むには充分に参考できると思う。読みやすくわかりやすい書籍だけに、プレゼンに自信のない若い(若くなくても良いんだけど)人にはお奨めして良い一冊だろう。


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『アンストッパブル』 [movie]

キャスト: デンゼル・ワシントン、クリス・パイン、ロザリオ・ドーソン
製作・監督: トニー・スコット
製作: ミミ・ロジャース、エリック・マクロード、ジュリー・ヨーン
脚本: マーク・ボンバック

ストーリー
米北東部のペンシルバニアで、大量の化学薬品とディーゼル燃料を搭載した最新式貨物列車が、整備ミスにより暴走してしまう。ベテラン機関士のフランク(デンゼル・ワシントン)は、初めてコンビを組むウィル(クリス・パイン)とともに暴走列車を止めようと奔走する。

こういっては実も蓋もないのだが、この手の映画で暴走列車が止らずに大火災発生などというバッドエンドはまずあり得ないだろう。だから、観賞者としては、役者の演技であるとか、ストーリーをどのように展開させていくのか、どんな小技をみせてくれるのかというのが期待のしどころだ。

本作に関していえば、デンゼル・ワシントンやクリス・パインはさすがの安定演技。また、操車場長のコニー・フーパーを演じるロザリオ・ドーソンも良かったと思う。展開と言うことでは少しばかりありふれたものになってしまっているが、これは暴走列車をストップさせるという単純なプロットだけに仕方のないところか。ただ終盤で、忘れかけていた伏線が回収されるあたりの小技は、お約束ながら爽快。

軽くまとめると、98分という短尺で手堅くまとめた職人技ともいうべきもので、映画料金分はきっちり愉しませてくれる作品だ。


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伯野卓彦:『自治体クライシス』(講談社) [book]

自治体クライシス 赤字第三セクターとの闘い (講談社BIZ)

自治体クライシス 赤字第三セクターとの闘い (講談社BIZ)

  • 作者: 伯野 卓彦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/02/03
  • メディア: 単行本

皮肉屋で有名な英国の作家のジョージ・バーナード・ショーがある女優(だったか?)に「私とあなたが結婚したら、あなたの頭脳私の容姿を併せ持った子どもが生まれますよ」といわれると「私の容姿とあなたの頭脳を併せ持った子どもが生まれるかもしれない」と返したそうだ。本書は、本来は「官と民」の良いところを併せ持つことを期待された第三セクターが、その悪いところを併せ持ってしまったがゆえの悲劇を描くノンフィクションだ。


内容(「BOOK」データベースより)
煽った国も銀行も借金で瀕死の市町村を見捨てていた! 廃墟と化したリゾート施設、一括返済の恐怖に脅える市長、金融機関に訴えられた町、風呂にも入れない住民たち…NHK『クローズアップ現代』があぶり出した真実、プロデューサーが描く衝撃のノンフィクション。


著者はNHKの「クローズアップ現代」などのチーフ・プロデューサーを務めた人で、同番組の取材対象として「第三セクター」の調査を始めたところ、その危機的な実態が明らかになったというのが本書の内容だ。

第三セクターとは何か、ということはリンク先を参照していただこう。いわば不発弾であった第三セクターだったが、その信管をハンマーで殴りつけるような法律が2007年 6月に成立した。その名称は「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」。乱暴に要約すれば、これまで地方自治体にとっては簿外だった第三セクターの債務をバランスシートにオンさせなければならならなくなるという法律。それにより、当該自治体の財務体質の健全度を計るわけだ。

結果、2007年現在で7,900社ある第三セクターの約40%が赤字、5%が債務超過に陥っていることが判明した。当方の勝手な推測だが、なかには無理矢理に数字を作っている法人もあるはずだから、実質債務超過の法人はもっとあるのではないか、と思った。

さて、本書で取材対象となった地方自治体は青森県大鰐町・長野県飯縄町・北海道芦別市・同赤平市の四市町村。 そのうちで、もっともページが割かれているのは青森県大鰐町のケースだ。バブル期のリゾート法による大型リゾート施設の建設と、そのために町と手を組んだ民間デベロッパーの凋落(住専問題も関わっている)。残ったのはそれら施設の廃墟と大きな借入金だ。

本書であきらかにされるのは、その借入に地方自治体が損失補償をしているということ。第三セクターによる弁済が無理になったら代位弁済をするという契約だ。そして、多くの自治体がその弁済能力を遙かに超えた借入をしている。にもかかわらず、地方自治体はなんと「自己破産」できないのだ。

赤字を垂れ流してまで運営を継続できず、かといって清算すればその借入金が自治体の財政に重くのしかかって来るという、引くに引けない状態。なぜ、こんなことになったのか、そして責任は誰にあるのか、というのが本書のテーマだ。

そのときの経済情勢によって政策をコロコロと変える国や、その政策にうまく乗って儲けようする民間企業、そして先見性のない地方自治体の首長や議会に責任を求めるのは簡単だ。でもね、最後に著者が言っているように、そんな首長や議員を選んだのはわれわれ市民に違いないわけで、結局ぐるりと廻って自分たちに返ってきてしまうのだ。

第三セクターは、おそらくそんな状態に違いないと思っていたので驚きこそは少なかったものの、確かな取材力に裏打ちされたディテールは読んでいて慄然とする。今の日本の実情を知るという意味では読んでおいて損はない作品。


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牧野武文:『ゲームの父・横井軍平伝』(角川書店) [book]

ゲームの父・横井軍平伝  任天堂のDNAを創造した男

ゲームの父・横井軍平伝 任天堂のDNAを創造した男

  • 作者: 牧野 武文
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/06/11
  • メディア: 単行本

実に久々のエントリだ。ここまでサボったのは初めてかもしれない。サボりの理由は、ひとつには気分の問題。青空がのぞかない日々における季節性鬱が考えられる。もうひとつは、Xbox 360のゲームにはまっているということ(ぜんぜん季節性鬱じゃないな)。『 ラスト レムナント 』というロール・プレイング・ゲーム(以下RPG)なんだが、これがおもしろい。

RPGは学生時代にやった『ドラゴンクエスト2』以来で、20年以上前のことだ。20世紀以来やっていなかったRPGを現代のソフトでプレイすると、もう浦島太郎状態である。おどろいたね。ここまで3Dグラフィックが華麗なものになっているとは思ってもいなかった。イベント部分なんてまるで映画のようじゃないか。

今のところ、まだDisk1さえも終わっていないので、クリア後に総合的な評価はエントリしたいと思っている。ただね、プレイしながら少しばかり違和感を持ったことも告白しておこう。ひとつには、RPGが21世紀になっても「剣と魔法の物語」であり続けているということ。もちろん、プレイヤーを非現実の世界に持って行きやすい装置ではあるんだろうが。

もうひとつは、ファミコン時代の「ドラゴンクエスト」と本質は変わらない探求の物語であること。どんなに華麗な3DCGで飾り立ててあろうとも、だ。そして、得られる本質的なエモーションは、動作周波数1.79MhzのCPUで駆動したファミコンと同3.2Ghz駆動のXbox 360とで、それほど変わらないのじゃないか、と思ってしまったりするのだ


内容紹介
ゲームボーイ、ゲーム&ウオッチ、光線銃、ウルトラマシン、ウルトラハンド・・・これらの玩具はすべて、任天堂の伝説的開発者、横井軍平の発案によるものだった! 横井の発想哲学「枯れた技術の水平思考」とは?

本書は、前述の読書欲減退期にある背景とは無関係に購入し積ん読状態であったのだが、この時期に本の山のなかから抜き出したということではちょっとしたシンクロニシティとはいえる。

まず巻頭には、横井氏が中心となって開発した玩具やゲームの写真が掲載されている。当方の前後の世代にはその多くを見知ったものであることに少しおどろく。ウルトラハンドウルトラマシーンなんて懐かしいね(持ってはいなかったが)。なかでもゲームウォッチは当方でさえも買ってもらったことのあるゲーム機で、それを横井氏が中心となって開発していたわけだ。

著者はまず冒頭で、横井氏の「枯れた技術の水平思考」という言葉を紹介する。 詳しくはリンク先を読んでもらうとして、ここでは「安く作らないと売れないというのはアイディアの不足なんです」という氏の言葉を紹介しておこう。

入社後に、暇つぶしの手すさびで作ったウルトラハンドが社長の目にとまり商品化されたことや、社長直属の開発部に配属後、枯れた技術を独自の発想で商品化していく横井氏の活躍が記述されていく。オイルショックの余波で失敗した事業の失地挽回となったゲームウォッチ開発エピソードなどすべてが興味深い。

で、実は当方が感嘆したのは「枯れた技術の水平思考」という氏の開発哲学の根源にある、遊びの本質を見抜く目だった。ゲームボーイも氏の開発した商品だったが、コスト面や電池の保ちからモノクロ液晶を採用した。そしてそれ以上に、カラー液晶は氏にとって遊びの本質ではないということも意味していた。


私はいつも「試しにモノクロで雪だるまを描いてごらん」と言うんです。黒で描いても、雪だるまは白く見えるんですね。リンゴはちゃんとモノクロでも赤く見える。
(143ページ)
 

どんなに技術が先鋭化してCPUが高速になりリッチコンテンツが提供されようとも、人々が楽しむためにはその遊びの本質が揺るぎないものでなくてはならない、と当方は読んだ。そして実際、任天堂のホームページや社長インタビューを読むと、氏の思想は本書サブタイトルにある同社の「DNA」として受け継がれている思う。そのあたりは下記をご参照。

■後藤弘茂のWeekly海外ニュース■
任天堂 岩田聡社長インタビュー(1)マンマシンインターフェイスを直感的にすることがカギ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/1206/kaigai324.htm

社長が訊く Wii プロジェクト - Vol.1 Wii ハード編
http://www.nintendo.co.jp/wii/topics/interview/vol1/index.html


本書を読むと、横井軍平氏が人間の創造力/想像力を信頼し愛してきた人物として感じられる。世の中にはすごい人物がいたんだと嘆息させてくれる一冊。おすすめ。


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