山田正紀:『日曜日には鼠(ラット)を殺せ』(祥伝社) [ebook]
先日購入したSONYのPRS-350で初めて読んだ電子書籍ということになる。著者のファンである当方ならではの選択だ。これも先日のエントリで申し述べたのだが、このファイルが本機で読めるかどうかはよくわからなかったのでホッとしたのだった。
PCは別として、専用の読書用端末で本を読むのは初めての体験。どのように感じたかといえば、ほとんど違和感はなかったということ。ほんの少し感じたのは、寝っ転がって読むと画面が暗いことくらいか。紙の本では感じないのに、そのあたりがE-Inkの特性なのかね。ライト付きブックカバーを買って良かったと思った次第。
内容(「BOOK」データベースより)
「この門をくぐる者、すべての希望を捨てよ!」21世紀型最新鋭の恐怖政治国家。その統首の誕生パーティが始まり、政治犯が檻から解き放たれた。1時間以内に恐怖城から脱出できたら特赦が下りるのだ。元公安刑事、テロリスト、主婦、ニュースキャスターなど8人の男女が鼠のように追い詰められる、究極バトル・レースの火蓋が切って落とされた。
当方はまったく知らなかったのだけど、『日曜日には鼠を殺せ』というタイトルは1964年に制作された映画で、フレッド・ジンネマン監督・グレゴリー・ペック主演のもの。と思ったら、その映画にも原作があり、エメリック・プレスバーガーという脚本家・映画製作者が書いたもの。そのプレスバーガーという人はマイケル・パウエルという人とコンビを組んで「パウエル=プレスバーガー」による共同製作・監督・脚本で知られている(らしい)。
その映画は未見なのでどのような関係があるのかはわからないが、本書の内容についていえば至って著者らしい作品といえる。基本的には絶体絶命の窮地に陥った人々が、ミッションインポッシブル的な知力と体力と特殊能力を使ってそこから脱出しようとするもの。
ただ本作では、梗概を読んでいただければおわかりのように、その窮地や人間の配置からして死亡フラグが見え見えなところがあるのでスッキリ爽快というわけにはいかない。しかも長めの短編、というか中編小説が一冊の本になっているような体裁だから物足りないとは言える。
でもね、実は見逃していた作品だし、こうやって電子書籍を探していなかったら手に取らなかったかもしれないと思うと、それはそれで縁があるのかもしれない。当方としては、非常によい意味での暇つぶしにはもってこいの作品であったといっておこう。