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福田和代:『オーディンの鴉』(朝日新聞出版) [book]

オーディンの鴉

オーディンの鴉

  • 作者: 福田 和代
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2010/04/07
  • メディア: 単行本

内容(「BOOK」データベースより)
「私は恐ろしい」。不可解な遺書を残し、閣僚入り間近の国会議員・矢島誠一は、東京地検による家宅捜索を前に謎の自殺を遂げた。真相を追う特捜部の湯浅と安見は、ネット上に溢れる矢島を誹謗する写真や動画、そして、決して他人が知り得るはずのない、彼の詳細な行動の記録を目にする。匿名の人間たちによる底知れぬ悪意に戦慄を覚える二人だが、ついに彼らにも差出人不明の封筒が届きはじめる…。スケールの大きなクライシスノベルを得意とする作者が挑んだインターネット社会の“闇”。


主人公は東京地検特捜部の検事。著者の元検事への取材の成果で、序盤で描かれる捜査や尋問のシーンなど迫真性はそこかしこに感じられる。でも、高村薫の『 マークスの山で描かれた警察官たちが、同僚に対してネタをひた隠しにする姿が本当だとしたら、検事なんてもっと凄まじい化かし合いがあるのでは、とも思ってしまう。

また、設定と題材がミスマッチだと感じる。事件やその真相が、検事を主人公にするにはリアリティが不足気味。当方には、著者の目標が米国のテレビドラマのような作品であると感じられたのだが、残念ながらその域には達していない。このテーマであれば(良し悪しは別として)倍以上の書き込みで、細かいリアリティを積み重ねることよってサスペンスが生成されるのではないか。パーツのそれぞれは端正にまとまっているのに、全体としてみるとどこかちぐはぐな印象がするミステリだ。


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