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三品和広:『経営戦略を問いなおす』(筑摩書房) [book]

経営戦略を問いなおす (ちくま新書)

経営戦略を問いなおす (ちくま新書)

  • 作者: 三品 和広
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2006/09
  • メディア: 新書

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昔、ある上司が言っていた「無策も策」という言葉が好きだ。事態に即応するだけのスピードや知識があることが前提なんだろうけれど。とにかく、会社組織の一部は、「策のための策」というか、仕事のための仕事を作っている場合が多いように思う。もっとシンプルに、ってわけにはいかないものかね。


内容(「BOOK」データベースより)
世の大半の企業は、戦略と戦術を混同している。成長第一で事業を拡大したのに何の利益も出なかった、という企業が少なくない。見せかけの「戦略」が、企業の存続を危うくする。目指すべきは、長期で見た利益を最大化することである。それを実現する戦略はマニュアル化になじまず、突き詰めれば人に宿る。現実のデータと事例を数多く紹介し、腹の底から分かる実践的戦略論を説く本書は、ビジネスパーソン必読の書である。


タイトルのような書籍だから、冒頭では当然のように「戦略とは何か」という問いかけからはいる。当方も含めた多くの人にとっては「何となくわかったつもりではいるけれど、あらためて問われると、どこか窮するもの」に違いない。では、経営者はどのように考えているのか。

同じく冒頭でデル・コンピュータの創業者であるマイケル・デルの4つの競争戦略を引き、「マイケル・デル氏が戦略として掲げる内容は、すべて単なる掛け声」であり、「おもしろい点は、何を言っていないかの方に」ある、と著者は言う。「戦略が先にあって成功したというよりは、成功の現実が先にき」たから、戦略を語る口調が冴えないと言うのだ。

なるほど、読者の興味を引きつける導入だ。本書は、そんな括弧付きの「戦略」であるとか戦略もどきを振り回して実害を被ることを回避するために、また、そうはいっても戦略を持たないことにはジリ貧になってしまう現在の社会・経済環境における経営者および経営者を目指す人向けに執筆されたものだ。

前半部では、製造業を中心に、上場している企業の営業利益の推移を分析する部分が白眉か。成長「戦略」により事業の多角化・売上高の極大化を志向した結果、利益面ではじりじりとその数値を下げているという指摘には驚く。乱暴に要約すると、10年単位での長期戦略こそが戦略であるというのが著者の主張。

後半部では様々な企業の戦略の特質を紹介しながら、「戦略はどこに存在するのか」について論考するとともに、著者の暫定的な結論が記述されるが、そこに興味のある方は本書を読んで確認していただきたい。特に最終章では、類似の書物にはないメッセージを読者に投げかけている。

数時間で読了してしまうほどの読みやすさ・わかりやすさではあるが読み応えは充分。戦略に関する論考以外の著者のユニークな考え方も魅力的な一冊。お奨めでしょう。


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