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福田栄一:『夏色ジャンクション』(実業之日本社) [book]

夏色ジャンクション

夏色ジャンクション

  • 作者: 福田 栄一
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2010/05/20
  • メディア: 単行本

ブログを書いていて良かったと思うことの一つに、同じ著者の前作を読んだとき、どんな感想を当時の当方が持ったのかを確認できることだ。へえ、当時の当方はこんなことを感じていたのか、と意外に新鮮だったりする。ことほどさように、前作を読んで感想を書き記したときの当方は、当方のようであって当方ではない幻のような存在のようであったりする。もちろん、文章を書き記すこと一般に言えるのかもしれないけれど。


内容(「BOOK」データベースより)
親友と恋人に裏切られて借金を背負い、住まいを失った信之。ミニバンで寝起きする生活を送っていたが、ひょんな出会いから、七百万円の大金を所持する老人・勇を山形まで送り届けることに。高速道路を北へとひた走る信之は勇の金を奪おうと考えるが、ヒッチハイクで青森を目指すアメリカ娘・リサが加わり、その思惑を迷走しはじめ…。失意の青年、おちゃめな老人、アメリカ娘。三つの人生を乗せて駆け抜けた熱い夏の一週間。


先日、青森に行ったことは既にエントリしているが、本書の梗概にもあるように主人公たちは同県にも立ち寄る。そんなシンクロニシティもあり軽快に読み進める。

で、過去のエントリを繙いていくと、性善説に基づいた物語であることとか、適度のお節介が共生を生むなど、本作とも共通する感想を抱いているようだ。同じ著者だから当たり前ではあるが。

本作で、新機軸だと思ったのは打ち拉がれた男の再生を描いているところか。これまでの著者の青春小説の主人公は、一定程度の完成された人格を持っていたように思うが、本作で描かれるのは、どこにでもいそうな性弱説の男だ。

彼が変わっていく内面描写はそれほどページが割かれていないし、ある意味お約束の展開であることは陳腐とも言えるかもしれない。それでも、この再生と成長の物語はどことなく当方の胸を打つものがある。なんだかんだいって著者の小説が好きなんだろう。出版されているのを見逃していた『 蒼きサムライ 』も買っておくとするか。


◎関連エントリ
 ・福田栄一:『エンド・クレジットに最適な夏』(東京創元社)
 ・福田栄一『あかね雲の夏』(光文社)
 ・福田栄一:『メメントモリ』(徳間書店)
 ・福田栄一:『晴れた日は、お隣さんと。』(メディアファクトリー)


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